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ペルセポネはペルセポネだ

今回はハデスが主役です。

「おお……冥王城は小さいな……」


 確かに巨人のコットスには狭く感じるだろうな。

 城には入れそうにないな。

 

「コットス、城の扉が壊れてしまうかもしれない。ペルセポネを連れてくるからここで待ってい……」


「ハデス!」


 え?

 この愛らしい声は……


「ペルセポネ……眠っていなかったのか?」


 城の扉からペルセポネが駆け寄ってわたしの腕に飛び込んできた。

 あぁ……

 甘い香りだ。

 柔らかい髪に、心配になるほど細い身体……

 わたしを見上げる青い瞳が美しい。

 ファルズフに盛られた毒のせいでペルセポネは身体が小さいからな。

 もっと食べさせなければ……


「ハデス……大丈夫だった? 辛くない?」


 わたしを心配してくれていたのか。


「あぁ……わたしは大丈夫だ。ヨシダさんはもう少しタルタロスに残るそうだ。それから……」


 コットスがあまりに大きくてペルセポネは気づいていないのかもしれないな。

 この姿に驚かなければよいが……


「え? どうかした……の……って! すごおぉぉい! もしかして、タルタロスの番人さんかな? さっきケルベロスから教えてもらったの! うわあぁ! 大きいね! ん? 腹筋がっ!? ええっ!? 見た事ない割れ方をしているよ!? かっこいいっ! 触ってもいいかな? って、頭もいっぱいあるんだね。腕もいっぱいだ! いっぺんにいろんなお菓子を作れちゃうよ」


 ……ペルセポネには怖いものが無いようだな。


「ははは! ハデスの言う通りだな。オレはコットスだ。『ペルなんとか』の魂の兄か弟でもあるぞ?」


 コットスもペルセポネの言動に驚いたようだな。

 わたしでさえ初めてコットス達に会った時は身体が震えたからな。


「ペルなんとか? ふふ。ぺるみでいいよ? えっと……って事は吉田のおじいちゃん……初代の神様の子供って事かな?」


「あぁ、そうだ。ぺるみか……ぺるみは酒は飲めるか?」


「匂いを嗅いだだけで倒れちゃうくらいだよ」


「ははは! そうか。城は狭そうだからな今宵はここで酒盛りだ!」


「うわあぁ! お花見だね。ちょうどあそこにキレイな花が咲いているし。わたしもジュースとお菓子を持ってくるよ。第三地区のおばあちゃんが持たせてくれたの」


「第三……? おばあちゃん?」


「えへへ。すぐ戻るから待っててね? ケルベロスにうさちゃんを見てもらっているの。うさちゃんをバスケットに入れて連れてくればケルベロスも一緒にお菓子を食べられるね。皆でお花見ができるなんて……すごく楽しみだよ」


「お花見? よく分からないが……花を見ながら酒を飲んだりお菓子を食べるのか?」


「うん。すごく楽しいんだよ?」


 あぁ……

 ペルセポネが笑っているな。

 美しい笑顔だ。

 また冥界でペルセポネと暮らせるとは……

 今はデメテルにも祝福されているから遥か昔とはずいぶん状況が変わったな。

 ペルセポネの笑顔を見ると、わたしまで笑顔になってしまう。

 それに、いつも険しい顔だったコットスも嬉しそうにニコニコ笑っている。

 ペルセポネには周りにいる者を幸せにする力があるかのようだな。

 何があろうと裏切らないというか……母のような温もり、安心感というか。

 ベリアルが創り出した『母親のような別人格』がペルセポネか。

 だが……ペルセポネはペルセポネだ。

 今はベリアルとペルセポネの魂の『初代の神の息子』が亡くなってからかなりの時が経った。

 息子の魂は、ペルセポネになり、ルミになり、ルゥになり、またペルセポネになった。

 全ての時に経験した全ての事が今のペルセポネの糧となり、成長してきたのか。

 もうベリアルとは完全に別の生き物になっているのだ。

 ペルセポネの人格がベリアルに吸収される事は無いと思っていいだろう。

 わたしには……ペルセポネのいない生活は耐えられない。

 絶対に失いたくないのだ。

 もしペルセポネがいなくなったら……

 わたしは尋常ではいられなくなるだろう。

 このまま……

 ずっとこのまま穏やかで温かい時を過ごしたい。

 もう二度と離れ離れにはならない。

 今度こそ幸せになろう。

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