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ヨシダさんとタルタロスへ(2)

今回はハデスが主役です。

「あぁ……ハデスか、久しいな」


 顔が見えるようにコットスが屈んでくれたな。


「しばらく人間と魔族の世界にいたのだ」


「あぁ……そうらしいな」


「ケルベロスから聞いていたのか?」


「いや、違う……今日は会いに来たのか……」


 ……?

 コットスがヨシダさんに話しかけている?

 今日は?

 会いに来た?

 どういう事だ?


「……コットス……わたしを……赦してくれ……いや、違う……赦してくれなどと……身勝手だな」


 ヨシダさんがいつもとは違う話し方をしている?

 これが本来の話し方なのか?

 だが、天族の姿には戻らないのだな。


「……赦す事などできないさ。オレは捨てられたのだ。醜いからとな……」


「あぁ……酷い事をしてしまった。人間と魔族の世界に捨てたあの子の近くにいなければ、その気持ちにさえ気づかずにいただろう。後悔をする事も無かったはずだ」


「……そうか。だが、反省したからといって赦される事ではない。我ら三兄弟はこのタルタロスに捨てられたのだ。もう時は戻せない」


「……何度でも謝る……だが……赦して欲しいとは言わない。言ってはいけないのだ。わたしの犯した罪は赦されるものではない。……申し訳なかった……容姿など……気にして……わたしは息子を何人も捨ててしまった。今さら会いに来て……不愉快だろう?」


「……そうだな。オレ達兄弟は寒くて暗いこのタルタロスで長い時を過ごしてきた。今でこそ番人として自由に歩き回れるが……以前はあいつらのように鎖で繋がれ寝返りさえできなかった」


「……そうか」


「全てお前のせいだ。お前がオレ達を暗闇に放り込んだのだ。オレ達を愛してくれたのは母上だけだった。なんとかして、オレ達をタルタロスから救い出そうとしてくれた……だが、この容姿のオレ達が天界に戻れば母上に迷惑がかかる。だからオレ達はまだタルタロスにいるのだ」


「……そうか」


 ヨシダさんはずっと辛そうな顔をしているな。

 本当はコットス達も母親の元に帰りたいのか。


「容姿……か。ペルセポネも話していたな」


「ペルセ……? 誰だ?」


 コットスは知らないのか。

 そうだな。

 最後にコットスに会ったのはペルセポネの産まれるずっと前だったからな。


「わたしの妻だ。ゼウスの娘でもある」


「ゼウスの娘? そうか……ゼウスは相変わらずか?」


「あぁ……相変わらずだ」


「ははっ! そうか!」


「女好きのダメ男だが……家族思いの優しい奴だ」


「……そうだな。あいつはダメな奴だ……だが……家族は大切にしていた」


「ゼウスは最近まで神の座を譲り、違う世界に行っていたのだ」


「違う世界に? それは?」


「冥界や天界とは全く違う世界だ。異世界と言えばいいだろうか。そこで、魂になったペルセポネを守り続けていたのだ」


「魂になった?」


「あぁ……色々あったのだ」


「そうか。今度酒でも飲みながらゆっくり聞かせてもらおうか。タルタロスも牢以外は暖かいからな。嫌がらなければ『ペルなんとか』も連れて来い」


「……牢にはペルセポネの祖父がいるのだ。ペルセポネは優しすぎる。心を痛めるはずだ。だから、今も連れて来なかった。悲しむ姿を見たくないのだ」


 ペルセポネには、これ以上背負い込む物を増やして欲しくない。

 やっと心穏やかに過ごせるようになったのだから。

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