わたしもずっとハデスと一緒にいたいよ
「思い出しただけで局部がキュウゥゥゥンってなっちまうなぁ……もう切り落とされて海に落ちたからじいちゃんの天族の身体には『大事なところ』が無くなったけどなぁ。今は天ちゃんが創った身体だから、ついてるなぁ」
キュウゥゥゥン?
吉田のおじいちゃんが内股になったね。
「そういえば、前に『綺麗なお姉さんがなんとか』って言っていたよね?」
「んん? そうだなぁ。大事なところが海に落ちたらそこがブクブク泡立ってなぁ……綺麗な姉ちゃんが産まれてきたんだ」
「……? それってどういう原理なのかな?」
「分かんねぇなぁ……天族はそうやって産まれてくる事もあるんだ」
「母親のお腹から産まれてくるだけじゃないんだね」
「あぁ……ベリアルの身体もそうだった」
「え? ベリアルも? でも……母親が……って……」
「……そうだなぁ。ベリアルは、自分にも母親がいるって信じてるなぁ」
「ベリアルも吉田のおじいちゃんの身体の一部から産まれたの?」
「いや、違うなぁ……」
「じゃあ、ベリアルが『会った事が無い母親の言葉じゃないか』って言っていたあの言葉は……?」
「……たぶん……遥か昔のぺるぺるの心の声を思い出したんだろうなぁ」
「わたしの声……?」
「ベリアルが遥か昔に創り出したもう一人の自分……なにがあろうが自分を裏切らないもう一人の自分……まるで母親のような存在……か」
「遥か昔のベリアルは……母親の愛が欲しくてわたしの心を創り出したって事?」
「寂しかったんだろうなあ……」
「……あの……さ。ベリアルの心が……第三地区にいて満たされたら、わたしの心は消えちゃうのかな?」
「……それは無いだろうなぁ。今は全く別の天族に分かれてるからなぁ。それにもうベリアルの心は満たされてるからなぁ」
「……? 今の話はどういう事だ?」
ハデスが険しい顔をしているね。
「前の世界でも自分の心の中に他の人格を創り出している人がいたの。わたしは本で読んだだけなんだけど……辛い事に心が耐えられなくて違う人格を創り出して、本来の心が眠っている間に創り出された人格が身体を使っている……みたいな感じだったかな? 上手く言えないんだけど……」
「それは……ペルセポネとベリアルの遥か昔の関係に似ているな」
「うん。そうだね」
「だが……それでなぜペルセポネの心が消えるのだ?」
「……本来の心が満たされて、創り出された心を吸収するっていうのかな? 分裂した心がひとつに戻る事があるらしいの」
「……ペルセポネが……消える?」
「あ……でも……それは無いみたいだよ? ベリアルは今すごく満たされているけど、わたしは消えていないし。もう、全く別の生き物になったみたいだね」
「絶対に……消えないでくれ……わたしを……また一人にしないでくれ……ペルセポネ……」
ハデスが、わたしを優しく抱きしめた……?
温かいな……
でも……ハデスの身体が震えているよ。
不安にさせちゃったんだね。
こんなにもわたしを大切に想ってくれているんだ……
「うん。消えないよ? ずっと……ずっとハデスと一緒だよ? もう二度と離れないから……」
あまりに長い時間を離れて過ごしていたからね。
わたしも、この温かい愛情を二度と手離したくないよ。