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実の息子に大事なところを切り落とされた父親か

「だが……危険だ……もしペルセポネに何かあれば……」


 ハデスは心配してくれているけど……


「自害じゃなければわたしは冥界に行くわけだし……ハデスに会えなくなるわけじゃないよ?」


「それはそうだが……もう、天界にも第三地区にも行けなくなってしまうのだぞ?」


「わたし……ね? 上手く言えないけど……ハデスとの赤ちゃんは絶対に産みたいの」


「ペルセポネ……?」


「この数千年に及ぶわたし達の日々は……赤ちゃんを授かれば……その赤ちゃんを幸せに育てる事ができたら……うーん……上手く言えないけど……今のわたし達の幸せだけで終わりにしたらダメなんだよ。これから先、もっともっと幸せを続けて、繋いでいかないといけないんだよ」


「ペルセポネ……」

 

「わたし達が幸せに暮らす姿を皆に見てもらいたいの。今までわたしを愛してくれた皆に安心してもらいたいし……何より……大好きなハデスとの赤ちゃんを抱っこしたいんだよ」


「……安全が確認されたらだ。そうでなければ子を授かるわけにはいかない」


「ハデス……」


「やっと巡り会えたのだ。もう二度と離れたくない。……確かにペルセポネが亡くなれば……わたしと共に冥界で暮らせるだろう。だが……第三地区のおばあさんや魔族と二度と会えなくなるのは絶対にダメだ。それに、胎児の時に爆発したとしたら……冥界に行く時に赤ん坊は腹にいるのか、それとも胎児の姿のまま腹から出ているのか……何も分からない」


「それは……」


「赤ん坊はもう少し後にしよう。わたしも色々調べてみる。冥界は遥か昔わたしが冥王になる前に色々と実験をしていたようなのだ」


「実験?」


 人体実験みたいなものかな?


「そこに何か記録が残っているかもしれない。かなり危険な事をしていたようだからな。もしかしたら闇に近い力を持つ者同士に子を産ませていたかもしれない」


「そんな事が……ハデスが冥王になる前は冥界は怖い所だったんだね」


「あぁ……常に薄暗く……酷い所だった」


「その記録は執務室にあるのかな?」


「いや……タルタロス……冥界の深い部分にある」


「タルタロス? そんな場所があったんだね」


「……ペルセポネには伝えていなかったが……タルタロスには……まだ罪人が大勢囚われているのだ」


「罪人が?」


「あぁ……わたしの父も……そこにいる」


「え?」


 じゃあ……わたしの『おじいさん』はハデス達との戦いに敗れてずっとタルタロスに囚われているって事か。


「過去の忌まわしい記録と共にタルタロスに幽閉されているのだ」


 ……ハデスはお母様達と、実の父親に飲み込まれてずっとお腹の中に閉じ込められていたんだよね。

 その父親を倒してタルタロスに追放したんだね。

 ハデスは優しいからきっと辛かったはずだよ。

 あ、ハデスの父親なら……初代の神様である吉田のおじいちゃんの息子さんって事でもあるんだ。

 

「吉田のおじいちゃんにとっては息子さんになるんだよね?」


「んん? そうだなぁ……じいちゃんの大事なところを切り落としたかわいい息子だなぁ……」


「……!? 実の息子さんに切り落とされたの!?」


 怖い話だね……

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