自分が今どんな顔をしているかなんて見えないからね
「ペルセポネはカーバンクルと先に、やすんでくれ。わたしは執務室に寄ってから行くからな」
ハデスの表情が暗いね。
「うん。ハデス……嫌なお客さんが来るの?」
「……あ、いや、そうではない。気にする事はない。ゆっくりやすんでくれ。明日はアカデミーでプリンアラモードを作るのだろう?」
「え? あ、そうだった。作ったらケルベロスにも持ってくるからね」
「それは甘い物ですか?」
「プリン……アラ……?」
「プリンとはあの甘くて滑らかでおいしい物だよな?」
「ひとつのお皿に、プリンと生クリームとアイスクリームとフルーツが入っているんだよ? すごくおいしいの」
「なんと! そんなに豪華な物があるなんて!」
「アイスクリームとはこの前食べたあの冷たい物か?」
「楽しみにしていますね! 絶対絶対ペルセポネ様が持ってきてくださいね!」
……今、遠回しにハデスに持ってこさせるなって言ったような?
ハデスは気づいていないみたいだから黙っていよう。
「うん。じゃあ、先にやすむね? おやすみ」
冥王城の長い廊下を歩くと、抱っこされているうさちゃんが話し始める。
「マタ、ペルセポネト、ココニ、クルコトニ、ナルトハ」
「そうだね。うさちゃんは天界の方が好きだったのかな?」
「……オレハ、ペルセポネノ、イルバショガ、イチバンスキダ」
「うさちゃん……ずっと冷たい海の中にいたんだね。寒くなかった?」
「ダイジョウブダ。ペルセポネハ、イロイロ、アッタ、ヨウダナ。ツラカッタ、ダロウ?」
「辛い事もあったけど、それ以上に楽しい事がたくさんあったよ?」
「ペルセポネハ、ツヨク、ナッタナ」
「えへへ。天界にいた頃は泣いてばかりいたからね。あ、部屋に着いたね。扉を開けるよ?」
え?
何これ?
部屋がピンクに模様替えされている!?
「……!? ズイブン、ヘヤガ、カワッタナ」
確かに。
うさちゃんが冥界にいた頃もこんなにピンクじゃなかったよ。
「あ……うん。最後に来た三日前はこんなピンクの部屋じゃなかったんだけど……」
「……ケルベロスノ、シュミカ?」
「分からないけど……壁紙もカーテンも床までピンクなんて……どうしちゃったのかな?」
「ベットモ、ピンクダナ。ケルベロスガ、ヒトリデ、ココマデ、デキルトハ、オモエナイガ」
「そうだね。ケルベロスはかわいい肉球の『あんよ』だからね」
「カワイイ? スルドイ、ツメガ、アルガ……」
「そうなの? いつもかわいい『あんよ』でほっぺたをちょんちょんしてくれるんだよ? ぐふふ。堪らないよね」
「……ペルセポネハ……ズイブン、カワッタナ」
「え? そうかな? うーん? どの辺がかな?」
「……ヘンタイニ、ナッタ」
「え……? 変態? わたしが?」
「カオガ……ニヤケテイル」
……!?
いつもベリアルが言っているアレの事!?
自分じゃ見えないけど……
もしかして、とんでもない『にやけ顔』って事!?
うさちゃんが呆れるほど酷い顔なのかな?
うぅ……
気をつけた方が良さそうだね。