吉田のおじいちゃんと天界(2)
「……分かっていたのか。さすが初代の神だな」
……?
え?
今、わたしの身体の中から声がした?
「まぁなぁ。一応、かわいいポセイドンのじいちゃんだからなぁ。かわいい孫の気配くらいは分かるさぁ」
吉田のおじいちゃん?
どうしてわたしに向かって話しかけているの?
「まさか……ポセイドン!? ちょっと! 気持ち悪い事をしないで!」
お母様?
どうしたのかな?
怒っているね。
「バレたか。そんなに怒るなよ。でもデメテルちゃんは怒った顔もかわいいな」
ん?
やっぱりわたしの身体の中から声がしている?
「よっこいしょっと!」
え?
んん!?
今わたしの身体の中から人が出てきた!?
どういう事!?
しかもこの声って……
「ネーレウスのおじいちゃん!?」
「そうだ。さっきぶりだな。ははは」
「はははって……どうしてわたしの身体からネーレウスのおじいちゃんが出てきたの!?」
「それは……さっきも話しただろう? 知らない方が幸せな事もあると。ペルセポネは、身体の六割は水分だと知っているか? さっきも言ったが、わたしは水のある所ならどこにでもとどまる事ができる」
「え? まさか……ずっとわたしの身体の中に入っていたっていう事!?」
「ずっとではない。時々だ」
「時々って……呼んだらいつもすぐに来てくれたよね?」
「……そうだったか?」
あれ?
一瞬、間があったような?
「ちょっと、ポセイドン……」
ヘスティアがポセイドンの前に歩いていく。
「ヘスティアちゃん? え? 怒ってるのか?」
「当たり前よ? かわいいペルセポネの身体の中に、あなたみたいな変態が入っていたかと思うと吐き気がするわ!」
ヘスティア!?
かなりの悪口だよ!?
海の王だけど、弟だから罪にはならないのかな?
「本当よ! わたしのペルセポネに入り込むなんて! これは、ハデスにもしっかり話させてもらうわよ!? 気持ち悪いわ! 最悪よ!」
お母様も怒っているね。
ハデスにも話すのか。
これは、大変な事になりそうだね。
「ポセイドン……」
ん?
ヘラ?
いつの間にかポセイドンの目の前に立っているね。
「うわあぁ!」
え!?
ヘラがポセイドンの顔を全力で殴った!?
あの怪力のヘラにあんな風に殴られたら、いくらポセイドンでも生きていられないんじゃ?
「ポセイドン……お前気持ち悪いわ! 女の子の身体に入り込むなんて! 姉としてお前をこの世から消し去ってやるわ! 自害して詫びなさい!」
ヘラ!?
自害って、消滅させるつもりなの!?
「え? 待て! かわいい姪を守っていただけなのにぃ!」
おぉ……
生きていたね。
さすがは海の王だね。
って、そうじゃなくて……
今度こそポセイドンが危ない!
まずいよ。
このままじゃ海の王がいなくなっちゃうよ。
「待って!? あの……ポセイドンが言っている事は本当だよ? あの……ずっとわたしを守ってくれていたの」
確かにやっていた事は気持ち悪いけど、助けてもらっていたのは事実だよ。
消滅させられたらかわいそうだよ。
「ペルセポネェ……」
ポセイドン……
とりあえず今は生きられる道を探そう。
でも、お母様達は赦してくれたとしてもハデスは……
絶対に赦さないだろうね。




