やっぱり吉田のおじいちゃんはすごいよね
うさちゃんはわたしの腕の中でぐっすり眠っているね。
よし、わたしも何かお菓子を買って食べよう。
クッキーもいいけど、パンもおいしそうだな。
あ、お惣菜もあるんだね。
はぁ……
いい匂い。
ちょうどお腹が空く時間なんだよね。
あれは、トマトで煮た魚かな?
キャベツで何かを包んだ物が入ったスープもあるね。
でも、これを食べたら夕飯が食べられなくなっちゃうよ。
うーん。
「ぺるみはどうした?」
おばあちゃんが吉田のおじいちゃんと手を繋ぎながら話しかけてきたね。
「うん。おいしそうだけど……今食べたらせっかく作ってくれてある夕飯を食べられなくなっちゃうかなって」
「それなら大丈夫だ。ほれ、皆も来てるからな」
「え?」
……!?
いつの間に!?
第三地区のおじいちゃんとおばあちゃん達が皆で来ている!?
すごく楽しそうにしているよ。
人化したウェアウルフのお兄ちゃんもいるね。
「ぺるみには話してなかったか? 坊っちゃんが市場で暴れたあとから第三地区の皆でちょくちょく遊びに来てたんだ。売り上げ貢献ってやつだな。ハデスがこづかいをいっぱいくれてなぁ。市場が潤えばヘリオスも安心するだろ?」
「え? そうだったの?」
「今日の夕飯は市場て食べる事になったんだ。だから、腹一杯食べていけ? 帰っても食べる物は、何もねぇからなぁ」
「……うん」
「……? どうした? 悲しそうな顔をして」
「……あ、うん。第三地区の皆に……申し訳なくて……」
わたしの……ペルセポネの魂が入れる身体を作り出す為に巻き込んだだけじゃなくて、今までこの世界の第三地区に閉じ込められていたんだから。
「ぺるみのせいじゃねぇさ。それに、皆楽しく暮らしてるんだ。申し訳ねぇなんて考えるな。見てみろ、楽しそうに笑ってるだろ?」
「……うん……え? ええ!? ちょっと待って!」
吉田のおじいちゃんがジャックに日本刀を振り下ろさせて真剣白羽取りをしようとしている!?
ダメダメ!
失敗して真っ二つにしちゃったら……
あれは創り物の身体なんだよ。
二つに分かれた左右の身体が別々に動き出しちゃう。
「ほれ、兄ちゃん。日本刀でサクッとやってくれ」
「ダメですよ! 危ないです。すごく良く斬れるんですよ!?」
「大丈夫、大丈夫。ほれ、早く早く」
「あぁ……困ったな」
ほら、ジャックも困っているよ。
「もう! 吉田のおじいちゃん! ダメだよ、困らせたら!」
「ええ? だってだってぇ、一回やってみたかったんだもんっ! 真剣白羽取りっ!」
「危ないんだよ! いろんな意味で!」
真っ二つになった身体が動き出したら地獄絵図だよ!
「んもう……ぺるぺるってば心配性さんなんだなぁ。大丈夫だからほれ、早くサクッと……」
「だからダメなの!」
「じゃあ……頭の上にリンゴを置くからそのリンゴだけを斬る……」
「ダメなの! もう! おじいちゃんはジャックを困らせないの!」
「うぅ……ぺるぺるが怒ったぁ……お月ちゃぁぁん……ぺるぺるが怖いよぉ。赤ん坊の時はおむつまで替えてあげたのにぃ……ぐすん」
「おむつの話はしないでって言ったでしょ!? 恥ずかしいんだから!」
「ははは。ぺるみは元気になったなぁ。それでいいんだ」
おばあちゃん……?
あぁ……
そうか、わたしが暗い顔をしていたから吉田のおじいちゃんが心配してこんな事を……?
やっぱり吉田のおじいちゃんはすごいよ。