うさちゃんとハデスは犬猿の仲みたいだね
おばあさんがレオンハルトの兄妹と空間移動で海賊の島に戻って少し経ったら、お昼寝していたベリアルが起きてきたね。
「ばあちゃんっ! お腹空いたよ……ん? ばあちゃんが抱っこしてるのって……うさぎ? ばあちゃんのうさぎか?」
そうか。
ベリアルは朝、うさちゃんに会っていなかったんだ。
遥か昔の天界では会った事がなかったのかな?
「ん? ばあちゃんのうさぎじゃねぇぞ?」
「うわあぁ! かわいいなぁ! 真っ白で……!? おでこに宝石が埋め込まれてるぞ!? かわいそうに……痛くないのか? あれ? どこかで見たような……」
「……」
あれ?
うさちゃんはベリアルの話を黙って聞いているね。
ベリアルをじっと見つめているよ。
「かわいいなぁ。撫でてもいいかな?」
「……」
やっぱり話さないね。
「あ、ベリアル、このうさぎちゃんが捜していたうさちゃんなの」
「そうなのか? 天界にいた頃に何回か見た事があったけど……やっぱりかわいいなぁ」
ぐふふ。
ヒヨコちゃんのベリアルも超絶かわいいけどね。
やっぱりベリアルはうさちゃんが遥か昔の自分の闇の力から生まれた事は分からないみたいだね。
「昨日の夜見つかってね。あ、グリフォンのお兄ちゃんに、もう捜さなくていいって伝えないと」
「それなら、もうじいちゃんが伝えておいたぞ? うさちゃん探知機も持って帰ってきたからな」
さすが、吉田のおじいちゃんだね。
「助かるよ。ありがとう。って……おじいちゃんはうさちゃんの居場所を知っていたんだよね?」
「ん? 知ってたぞ?」
「教えてくれれば良かったのに……何か理由があったの?」
「……うーん。そうだなぁ。まぁ、色々あったんだ」
「色々?」
何か良くない事かな?
「ペルセポネ……ヨシダのおじいさんの言う通りだ。あの辺りは魔族に襲われた人間の船の墓場だったのだ。だが、昨夜はそれが無くなっていた。ペルセポネが辛い思いをしないように片付けてくれていたのだろう」
ハデスはヴォジャノーイ王だったから海の事に詳しいんだよね。
じゃあ、本当に吉田のおじいちゃんがわたしの為に船とか死体を片付けてくれていたのかな?
「まぁ、それもあるけどなぁ……うさちゃんはぺるぺるにベッタリだから色々が落ち着いてからがいいかと思ったんさ」
……?
色々が落ち着いてから?
「……確かにカーバンクルは遥か昔、ペルセポネから離れようとしなかったからな。だが、アカデミーには付いて行かなかったのだな」
ハデスが昔を思い出して遠い目になっているね。
かなり大変だったのかな?
そんなにうさちゃんはわたしから離れたがらなかった?
「アサハ、ネムカッタシナ。ソレニ、オレノ、ヒタイノ、ホウセキハ、ニンゲンノ、ホッスル、モノダ。アカデミー、ニハ、イカナイホウガ、イイ」
「確かに、闇の魔法石は貴重だからな。……カーバンクルも成長したのか。以前は何があろうがペルセポネから離れなかったのに……」
「……ハデス(バーカ)」
お?
うさちゃんが優しくハデスの名を呼んだね。
もしかして、うさちゃんとハデスは和解したのかな?
……って今、小声でバーカって言わなかった?
ハデスが静かに怒り始めたよ。
「こいつ……昔は愚かなほどぴったりとペルセポネにくっついて、わたしが近寄ろうものなら噛みついてきたからな。何も変わっていないのだな……」
うさちゃんがハデスに噛みついていた!?
そんなの知らないんだけど!?
「ハデスモ、ペルセポネガ、ミテイナイ、トコロデ、オレノ、ミミヲ、シバッテ、イヤガラセヲ、シテイタダロウ」
ハデスがうさちゃんの耳を縛っていた!?
……そういえば遥か昔にうさちゃんの耳が絡まっていた事があったような?
「それはカーバンクルがペルセポネとわたしが仲良くしようとする邪魔をしたからだろう」
「ペルセポネハ、オレト、ナカヨク、シタイノニ、ジャマヲ、スルカラダ。ハデスハ、キライダ」
この二人……
小さい子供のケンカみたいだね。