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ハデスが冥王になった時

「ハデス……まさか幼女が好きになったの?」


 だから、最近ウリエルの私室に行っているのかも。


「それは違うはずよ? 幼女好きというよりはグンマのルミの姿が知りたかったのよ。兄弟で自分だけがルミを知らなかったのだから。座ってお茶の続きをしましょう?」


 お母様が給仕に新しいお茶を頼むと、また皆で話し始める。


「ポセイドンは、おじ様なんだよね?」


「そうよ? 海を支配しているの。ペルセポネは幼い頃に学んだ事を覚えているかしら?」


「えっと……何かな?」


「この天界は『空、海、冥府』の三つに分かれているの。ひとつの大きな島が浮かんでいると思えば分かりやすいわね。その島の底が冥界。空が天界。そして、海をポセイドンが治めているわ。遥か昔はこの三つ全てを『天界』と呼んでいたけれど、いつの間にか空だけを天界と呼ぶようになったの」


「確か、くじ引きで皆が行きたがらなかった冥界の王を決めたんだよね?」


「あぁ……そうだったわね。ゼウスとポセイドンが冥界だけは絶対に行きたくないって言ってね。仕方なくハデスが冥王になったの。あのくじ引きは……酷かったわね」


「酷かった? 何があったの?」


「ゼウスが一番に引いたの。そうしたら『冥府』って書いてあってね? 泣いてもう一回引かせてくれって……それを何度も繰り返してね。五回くらい引いたらやっと『空』の紙が出てね。ポセイドンも同じよ? 箱に入った二枚の『海』と『冥府』の紙の『冥府』を十回近く引き続けてね。泣きながらもう一回、もう一回って」


「うわあぁ……ずるくない?」


「ハデスは優しいから黙って見ていたわ」


「でも、どうして皆は冥界を嫌がったの? 穏やかで良い所なのに」


「そうね……冥界は争い事がなくて素敵な所よね? でもその頃は違ったのよ。牢獄みたいな所だったの。天界で邪魔な者が送られる場所とでもいうか……冥界は一度入ったら簡単には出られない……うーん、なんと言うか……」


「言葉を選んでくれてありがとう。逃げ出そうとするとケルベロスにやられちゃうんだよね」


「あぁ……知っていたのね」


「うん。でも、誰も逃げようとはしないよ? 皆すごくのんびり穏やかに暮らしているから。ケルベロスも門番だけど、逃げ出す人がいないから、入ってくる人の対応をしているの。あとは、大量の書類に肉球の印をつけるの。すごくかわいいんだよ?」


「ふふふ。それはかわいいわね。ハデスが冥王になってから冥界は素敵な場所に変わっていったの。ハデスは誤解されやすいけれど、とても優しいの。わたし達姉弟は近くで見てきたからよく知っているわ? ペルセポネもハデスの優しさを知っているわよね?」


「うん。ちょっと不器用だから勘違いされちゃうけどすごく優しいんだよ」


「ペルセポネは幸せね。あんなに素敵なハデスに、こんなに愛されているのだから。わたしのかわいいペルセポネには誰よりも幸せになって欲しいわ?」


「お母様、ありがとう。わたし、すごく幸せだよ?」


 まさか、お母様とこんな話ができる日が来るなんて……

 数千年前のあの時には考えられなかったよ。

 

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