ベリス王には助けてもらってばかりだね
「ハヤク、メイカイヘ、イケ」
ハデスにこんな事を言えるのは、うさちゃんくらいだね。
「はぁ……仕方ない奴だ。ペルセポネ、少し冥界へ行ってくる」
「うん。ありがとう」
……ハデスはだいぶ丸くなったね。
ヴォジャノーイ族だった時にこんな事を言われたら大激怒だったよ。
「はぁ……やれやれ。それにしてもあの王妃は金の亡者でしたね」
ん?
中年の太めの人間の姿だけど……
「人化したベリス王だよね? 協力してくれてありがとう」
「いえ。きちんと報酬はいただきますから……まだ報酬を決めていませんでしたねぇ。何が良いか……あぁ……エメラルドの採掘権……採掘権かぁ……」
チラっとわたしの方を見ながら物欲しそうにしているよ。
さっき隣のクラスの人間からもらったエメラルドの採掘権が欲しいんだね。
まぁ、わたしが持っていても仕方ないし。
今回はかなり協力してもらったからね。
「ベリス王は、ちゃっかりさんだね。採掘権を譲る代わりにひとつお願いがあるの」
「はい。採掘権をいただけるのでしたら。なんでしょう?」
「エメラルドはたくさんあるみたいだし……第三地区の皆と天界のヘスティアとお母様とヘラにいつもお世話になっているお返しをしたいの」
「ほぉ……なるほど。分かりました。一番良質な物でアクセサリーを作りお渡しすれば良いのですね?」
「うん。それ以外のエメラルドは好きにしていいよ? あと、アクセサリーの加工はマリーちゃんとジャックの国にお願いしたいの」
「もちろんそのつもりです。最新のデザインを学ばせる良い機会になりますし」
「加工賃を払わずに練習として作らせるつもりなんだね……」
「ふふふ……わたしは聖人ではありませんので」
「ベリス王は商売上手だね」
「はい。善意だけで生きてはいけませんからね。では、先程あの愚かな人間に書かせた誓約書をいただけますか?」
やっぱり、水晶で見ていたんだね。
その時から目をつけていたのか……
「うん。これだよ?」
「では、新たに今の文言を追加した物を作成して……」
すごい!
高速で字を書いているよ。
……さすがにわたし相手に詐欺まがいな物は作成しないよね?
でも、プルメリアの王妃は騙してきたんだよね?
「ベリス王……レオンハルトのお兄さんをいくらで買ってきたの?」
「ははは。タダですよ」
「……偽物の金で買ってきたの?」
「はい。我らベリス族は鉄を金に変えられるのです。そして、込めた力が切れれば金は鉄に戻ります」
「なるほど……」
「王妃はおもしろいほどに、ぺるみ様とハデス様の想像通りに動きました」
「欲深い人間だからね。金持ちの商人が王族の血を引く少年を買いたいって言えば喜んで手放すと思ったんだよ」
「売り物ならば手荒には扱えませんからね」
王妃は本当に酷い人間だよ。