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海賊のおばあさんはどれほど辛い生き方をしてきたんだろう

「あ、ぺるみ、帰ったか」


 第三地区に帰るとおばあちゃんがまじめな顔をしてソワソワしているね。

 何かあったのかな?


「おばあちゃん? どうかしたの?」


「あぁ、レオンハルトの兄ちゃんがそろそろ着く頃なんだ」


「レオンハルトのお兄ちゃん? あぁ、そうだったね。妹も第三地区に来るんだっけ?」


「あぁ、赤ん坊なんて久しぶりだからなぁ。皆楽しみにしてたんだけどなぁ……この事を海賊のココのばあちゃんに話したら、自分達が面倒を見たいって言ってくれたらしくてなぁ」


「そうだったんだね。海賊の島はココちゃんもお兄様もいなくなって淋しくなっただろうからね」


「あぁ、第三地区にはハーピーちゃんもベリアルもいるから賑やかだけど、海賊の島は静かになっちまっただろうからなぁ」


「ココちゃんのおばあさんもお父さんも淋しいだろうね」


「そうだなぁ。かわいがってたココとヘリオスが大国の王様と王妃様になるんだ……なかなか会えねぇだろうし、辛いだろうなぁ。でも、今日からは賑やかになるだろう。レオンハルトの兄ちゃんの心の病は晴太郎はれたろうが診てくれるらしいからなぁ」


「吉田のおじいちゃんが? それなら安心だね」


「そうだなぁ。とりあえず妹も一旦第三地区に空間移動で連れてきて、レオンハルトの兄ちゃんと二人で海賊の島に行く事になったんだ」


「そうなんだね。海賊の島にはおじいさんとおばあさんが大勢いたけど、若い人間はココちゃんのお父さんと数人くらいだったの。あとは、魚人族が数人かな?」


「あぁ……聞いた話だとココのばあちゃんが、食いぶちを減らす為に捨てられた年寄りを連れてきたらしいなぁ」


「え? そんな……捨てたってどうして?」


「姥捨て山の話を知ってるだろ? 群馬で話したのを覚えてるか?」


「姥捨て山……うん。覚えてるよ。あれは悲しすぎるよ」


「そうだなぁ。さすがにばあちゃん達の時代にはもうそんな事は無かったけど……ずっと昔には実際にあったんだ」


「この世界にも……あるんだね」


「あぁ……年寄りだって生きていてぇんだ。でも、食いぶちを減らす為に……嫌な話しだなぁ。ばあちゃんも今は天ちゃんにこの身体を創ってもらったから若く見えるけど、実際は年寄りだからなぁ」


「捨てられたお年寄りをココちゃんのおばあさんが助けて海賊の島に連れて行ったんだね」


「立派な人だなぁ。ルゥの海賊のばあちゃんは」


「うん。でも……ルゥのおばあさんだって事は知らない振りをした方がいいのかな?」

 

「……ばあちゃんは、ちゃんと話した方が良いと思うぞ? ルゥの海賊のばあちゃんも高齢だからなぁ。生きてるうちに話した方が良い。後悔しねぇようになぁ」


「後悔……そうだね」


 残された人の後悔は痛いほど分かるからね。

 群馬でおばあちゃんが魔素にやられて亡くなった時、助けられなかった自分をすごく責めたんだ。

 あの時はまさか魔素で殺害されたなんて思いもしなかったけどね。

 生きているうちにもっとおばあちゃん孝行をしたかったって悔やんだんだ。

 ココちゃんのおばあさんも本当は孫としてルゥとお兄様を抱きしめたかったはずだよね。

 でも、シャムロックのおばあ様が赤ちゃんを亡くして苦しんでいたから……

 海賊の島の魔族がルゥのお母様の神力にやられそうだった事もあったらしいし。

 だから亡くなった『シャムロックのおばあ様の娘』と、ココちゃんのおばあさんの娘の『ルゥのお母様』を入れ替えたんだ。

 

 おばあさんは、辛かったなんて言葉じゃ済まないような苦しい日々を過ごしたんだろうね。

 そんな中、離れていても幸せに暮らしていると信じていた実の娘をあんな風に目の前で喪って……

 その時産まれた双子のお兄様とルゥを見てどう思ったんだろう。

 

 はぁ……

 わたしはもうルゥの身体じゃないけど……

 心が痛いよ。

 

 こんなわたしが『おばあさん』って呼んでもいいのかな?

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