ベリアルとジャック(3)
今回はヒヨコのベリアルが主役です。
「あはは! なるほど、こうなるから雨が降るんですね」
「すごく分かりやすいです」
「これならノートを開いても眠くなりませんね」
クラスの皆がぺるみのノートを見ながら感心しているな。
「でしょ? ちょっと……いや、かなり絵心が絶望的だからこんな感じになっちゃっているけどね」
自分でも分かっているんだな。
本当にぺるみの絵は恐ろしいからな。
この前なんて怖すぎて泣いちゃったし。
「いや、そこが良いんですよ! このリアルな巨大クモ、すごくかっこいいですよ? 少し闇を感じますけど……」
「え? あ、いや……それはクモじゃなくてかわいいネコちゃん……」
「え!? ネコ!? ……! ぷっ!」
「あはは!」
「ペリドット様、最高ですっ! あはは!」
「だから、わたしの絵心は絶望的だって言ったのに……恥ずかしいよ……じゃあ、皆もネコちゃんを描いてみてよ。わたし以外にも絶望的な絵心の……ええ!? なんでそんなに速く描けるの!? しかも上手い!」
「ははは! じゃあ、今度は学長の顔を描きましょうよ?」
なんだか皆、楽しそうだな。
「ええ!? 人間の顔は更に難しいんだよ……うぅ……こうかな?」
ぺるみが描く人間の顔か……
嫌な予感しかしないな。
「こ……これは」
「嘘……暗闇にうごめく悪の塊みたいな……」
「逆に、一分もしないでこの絵を描けるペリドット様は天才では!?」
「まるで紙の中で生きているみたいだわ」
ぺるみが天才的な絵を描いた?
まさかいっぱい描いて上手くなったとか?
どれ?
……!?
「うわあぁぁ! 怖っ! なんだこれ!? 怖すぎるだろ!」
暗闇にうごめく恐ろしい生き物……
今にも紙から飛び出してきそうだ。
怖っ!
「ペリドット様は……やはり、わたしがこのクラスにした事を恨んでおられるのでしょうか。うぅ……」
学長があまりの絵の怖さに泣いている!?
なんて恐ろしい絵心っ!
「学長!? 違うの! わたしは絵心が壊滅的で……それに、このクラスにしてもらって良かったって思っているんだよ?」
「本当……ですか?」
「うん! だって……わたし、このクラスが大好きだから! 先生もクラスの皆も大好きだから!」
ぺるみの嬉しそうな笑顔にクラスの皆もつられて笑顔になったな。
母親のデメテルに似てすごくキレイだな。
ぺるみが笑うと気持ちがあったかくなるんだ。
でもそれだけじゃない。
ぺるみは真っ直ぐだからな。
普通、誰かを大好きなんて簡単には言えないけど、ぺるみは真っ直ぐ目を見て言えるからな。
嘘偽りない気持ちか。
……?
なんだ?
胸の奥が、あったかい?
……オレ、この気持ちを知ってる。
遥か昔、天界でペルセポネ様に会った時よりもっと昔……?
……?
そんなはずないか。
……それにしても、さっきからジャックががっつり吸ってくるな。
オレの羽毛がジャックの鼻の中に入る感覚が気持ち悪い……
ぺるみには、やめろって強く言えるけどジャックには言えないな。
はぁ……
我慢するか。