ベリアルとジャック(2)
今回はヒヨコのベリアルが主役です。
「殺気? そう言うんですか? クラスの皆はもっとペリドット様を好きになりましたよ。隣のクラスの奴らは怖くて固まってたけど」
ジャックがちょっと悪そうに笑っているな。
「ジャックは怖くなかったのか?」
「はい! だってオレ達はペリドット様が優しいって知ってますから」
「ふぅん。そういうものなのか……」
「来月のテストで皆で良い点数をとって隣のクラスの奴らを見返してやるんです! ふふふ。今に見てろ!」
「もしかして、そいつらに頭が悪いってバカにでもされたのか?」
「……このクラスは……あの……勉強が苦手な学生の集まりなんです」
「え? そうなのか? ん? じゃあ、どうしてぺるみはこのクラスになったんだ?」
「……さぁ。不思議です。学長に何か考えがあったんじゃないですかね?」
「学長に考えが?」
どんな考えだ?
「ヒヨコ様……ジャック……」
ん?
いつの間にか学長がオレ達の側に来ていたんだな。
「学長? どうしたんですか? こっそりクラスルームに入ってきたんですか?」
ジャックの言う通りだ。
コソコソしているな。
「あぁ……ペリドット様は怒っていないか?」
ん?
学長の顔色が悪いな。
「え? 怒る? このクラスにした事をですか?」
「そうだ……」
「驚いてはいたみたいだけど、怒ってはいないみたいですよ?」
「……そうか。良かった……」
「どうして学長はペリドット様をこのクラスにしたんですか?」
「それは……」
「まさか、ペリドット様が勉強をできなそうだと思ったんですか?」
「あぁ……いや、実は『アカデミーに入学したい』と初めてお会いした時には王妹殿下だと分かっていてな。あの聡明な瞳は先々代の陛下によく似ておられたし、イヤリングが陛下と同じ物だったからな。陛下と王妹殿下がひとつずつイヤリングを持っている事は有名な話だろう?」
「はい。確か、お母上の形見の品なんですよね?」
「そのようだな。王妹殿下はそれは賢いと陛下から何度も聞かされていたからな。もしかしたらこのクラスを変えていただけるのではと……」
「そうだったんですか……」
「このクラスの学生は皆優しくて思いやりのある者ばかりだからな。ただ勉強の仕方が分からずに立ち止まっているだけなのだ。そうしているうちに劣等感や、やっても仕方ないと諦めてしまい更に勉強が嫌いになってしまった。違うか? ジャック……」
「……はい。ノートを開くだけで眠くなっちゃうくらいですよ。でも、ペリドット様にそう言ったら……ほら、学長もヒヨコ様も一緒にペリドット様の勉強方法を見てみませんか?」
ん?
ぺるみの勉強方法?
まさか……
怖い方法で無理矢理知識を詰め込ませるんじゃ?
ジャックが抱っこしてぺるみの近くに連れて来てくれたけど……
なんだ?
ノートの隅をパラパラめくっている?
書いた文字が動いているみたいに見えるぞ?
いや、あれは絵が絶望的に下手なぺるみが描いた絵だ。
……怖っ!