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合同講義は楽しいな(4)

「大丈夫だよ? 遊びながら勉強するの。それなら楽しく覚えられるでしょ?」


「遊びながら?」


 ジャックが首をかしげているね。

 クラスの皆も不安そうだよ。


「うん。勉強だと思うからイヤになっちゃうの。遊びだったら楽しいでしょ? お菓子作りもそうなんだよ? 一人分のクッキーの材料を三倍にすると三人分とかね?」


「……難しそうです。それってかけ算ですよね? 学者じゃないと分からないですよ」


 そうだった……

 この世界じゃ、そうなんだ。


「数学だけじゃないよ? 他の勉強も遊びとか普段の生活の中で無意識に使ったりしている事もあるし」


「無意識に?」


「うん。例えば……」


「はい。それでは皆さん揃いましたね」


 あ……

 誰か大講義室に入って来たね。

 この人間がさっき話していた男性の先生か。

 ふぅん。

 痩せていて背が高いね。

 わたしのクラスの先生は……

 あれ?

 いないね。


「(ジャック? 先生は?)」


「(あぁ、健康診断を交代で受けているんです。今頃医務室のはずですよ? )」


 健康診断?

 すごいね。

 この世界にもあるんだね。

 それで合同で講義をするのか。


「あなた様が……」


 ん?

 先生がわたしを見ているね。

 会ったのは今が初めてのはずだけど。

 ……わたしを見たあとに教卓に置いた懐中時計を見たね。

 なるほど、わたしが学長に渡した賄賂が分配されてあれを買ったんだね。

 

「先生! この大講義室にいる学生の中に、かけ算ができる天才がいるようですよ?」


 おぉ……

 隣のクラスの男子学生がわたしを見て笑いながら話しているね。


「……あぁ……やめなさい」


 先生は賄賂を貰ったから、わたしを庇おうとしているのかな?

 それとも王妹で元聖女だって知っているのかな?

 

「先生! この『天才様』に今からかけ算をさせてみませんか? おもしろそうですよ?」


 この人間はかなり性格が悪いね。


「やめなさい! 君は死にたいのか!?」


 おぉ……

 先生が声を荒げたね。

 この感じだとわたしがルゥだったって知っているね。

 先生の身体がガタガタ震えているのが見えるよ。

 事情を知っているわたしのクラスメイト達が哀れみの瞳で見ているね。


「先生……別に構いませんよ? かけ算を一の段から九の段まで暗唱すればいいんですよね?」


 わたしは群馬で高校生だったんだよ?

 かけ算なら完璧だよ。

 って威張る事じゃないか。


「ですが……殿下……」


「ただし、条件があります。わたしがもし学者でも難しいかけ算を暗唱できたら……この悪意に満ちた男子学生に罰を与えてください」


「罰を!? あの……処刑……でしょうか?」


「うーん。それはちょっとね……この人間の首をもらっても気持ち悪いだけだし」


「はぁ!? たかが小国の王女が何を偉そうに!」


 ……ハデスがこの人間をやる前にさっさと終わりにしよう。

 今頃離れた場所でこの状況を見て怒り狂っているハデスをヴォジャノーイ族のおじちゃん達がとめているはずだからね。


「じゃあ……たかが小国の王女がかけ算を暗唱できたらあなたは何をしてくれる?」


「はっ! 何でもしてやる」


「ふぅん。何でも……ね。じゃあ……このわたしのノートにそう書いて? あなたの名前と今日の日付もね?」


 さて、今度は何をもらおうかな?

 前は同じ方法でスウィートちゃんから領地をもらったんだよね。

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