合同講義は楽しいな(3)
「これから、このリコリス王国は変わっていくんだよ。あなたはその変わる時代を生きていくの。何かが変わるってすごく大変なんだよ? 意見がぶつかって、今まで仲の良かった人同士でも揉めるんだよ。『今まで通りがいい人』と『新たな時代を求める人』とでね。でも、そうじゃないと新しい時代は訪れないの。そうやって時代は変わるものなんだよ? でも……あなたが今先生を侮辱したのは『揉めている』んじゃないの。ただ他人をバカにして自分の方が上だって優越感に浸りたいだけなんだよ」
……無駄だったかな?
まだ十五歳くらいだろうからね。
よく分からなくて当然か。
「あなたは……先生を女だってバカにしたけど、あなたは女じゃないの?」
「え?」
お?
初めて反応があったね。
「他人から言われてイヤな事は、自分も言ったらダメなんだよ?」
「……実際バカだし」
この状況でそこまで言うなんて……
本当にすごく勉強ができないクラスって事?
「そうだとしても、バカなんて良くないよ?」
「だって……あの合計点じゃあ……一人一教科五点もとれていないんじゃ……」
「ん? 五点なら半分はできているんだよね?」
「え? あ……百点満点だけど」
「ん? え? 百点満点で五点?」
「……そうよ。だって、バカだけが集められたクラスなんだから」
……バカだけが集められたクラス。
わたしもその中の一人……か。
学長はわたしをバカだと思っていたからこのクラスに入れたんだね。
知りたくなかったよ。
「ペリドット様……あの……知らなかったんですか?」
ジャックが気まずそうな顔をしているね。
「あ……うん。えっと……でも、今日から普通に講義が進んでいるから次のテストは良い点数がとれるよ。ね?」
講義の邪魔をするスウィートちゃんもいなくなったし。
わたしもちゃんと勉強しないとおばあちゃんに雷を落とされちゃうからね。
「……あの。それが……何が分からないのかも分からないくらい勉強ができないんです」
……なるほど、負のスパイラルだね。
「次のテストはいつ?」
「え? えっと……来月の中旬くらいですけど……」
「このままバカにされっぱなしなんて絶対ダメだよ! 一緒に今までの復習をしよう?」
「え? あ……でも……さっぱり分からなくて……」
「大丈夫! すごく分かりやすい勉強の仕方があるの。騙されたと思ってわたしに五分ちょうだい?」
「五分……ですか?」
「うん! あ、今じゃないよ? クラスルームに帰ったらね?」
「……はい」
この世界の数学は小学校低学年レベルなんだよね。
ルゥだった頃にハデスに数学を教えてもらった時にスラスラ解いて驚かれたんだ。
……生後一ヶ月くらいだったから『ルゥは天才だ』って大騒ぎされたよね。