合同講義は楽しいな(2)
「キャー! ペリドット様素敵です!」
「瞳が一瞬キラッとしました! もう一度見たいです!」
クラスメイトの女の子達が瞳をキラキラ輝かせているね。
クラスの皆は今の殺気が怖くなかったのかな?
男の子達も、わたしが言い返した事に大満足の顔をしているよ。
「あ……ごめん。怖かったよね。あまりに愚かでうるさくて……クラスの皆は怖くなかった?」
「はい! オレ達はペリドット様がどんなお方か分かっていますから」
ジャックが目を覚ましそうなベリアルを寝かしつけながら笑っているね。
すごいよ。
この若さで子育てのプロだね。
「ねぇ……うるさい人間の女……あなたは女なんだよね?」
「……」
震えて話せないみたいだね。
当然か。
ハデスが殺気を出すと魔族でさえ動けなくなるからね。
人間ならもっと怖く感じるはずだよ。
「話せないみたいだから黙って聞いて? わたしの国は男とか女とかは関係ないの。パパは王様だけどご飯とかおやつを作るのがすごく上手なんだよ? ママは王妃様だけどすごく強いの。悪い敵が攻めてきた時なんてすごくすごくかっこいいんだから。女性だけど畑を耕すのが上手い人もいるし、すごく強い男性なのに優しくて手先が器用な人もいるの」
まだ、震えが止まらないみたいだね。
でもちゃんと聞いてはいるみたいだ。
「あなたは女なんだよね? この国は……特に貴族の女性には生きにくいらしいね。『でしゃばるな、女は大人しくしていろ』そう言われて育ってきたんだよね? 先生がどれだけ苦労してアカデミーにいるか考えた事も無いでしょう? あなたはただ先生を侮辱して自分の心を満たしているんだから。違う? 自分にはできない生き方をしている先生をバカにして現実から目を背けているんだよ」
冷静に、殺気を出さないように気をつけないと。
この世界は一見、女性に優しい国に見えるんだよね。
騎士が女性を守っているから。
でも、実際は違う。
『女は弱者。だから強い男が守るんだ。守られる立場なんだからでしゃばるな』そうやって女性を守る振りをして抑圧しているんだ。
ルゥのおばあ様が『孫』を捜す為に世界を巡っていた時も『女のくせに』って散々言われたみたいなんだよね。
『女は家にいれば良い』地位の高い貴族はそういう考えなんだ。
下級貴族とか平民は違うみたいだけど……
「先生は差別や偏見を受けながらも頑張ったんだよ。アカデミーで講師になってからもあなたみたいな時代錯誤な人間の言葉に傷ついてきたんだよ? ねぇ、あなたはこう言われたらどう思う? 『お前は女なんだから、勉強なんかしてどうするんだ。息を殺して生きていろ。バカなんだから余計な事をするな』……あなたが先生に言ったのはそういう事なんだよ?」
男尊女卑の酷いこの世界の人間に言っても通じないかな?
でも言わずにはいられないんだよ。
先生の頑張っている姿を知っているから……
「先生は苦労してきたの。すごく努力して、それが認められて先生になれたんだよ? あなたは何か努力をしているの? 本当に努力をしている事があるのなら、今、努力している先生をバカにする事は無いはずだよ? 何の努力もしていない人間が先生を侮辱するなんて虫酸が走るんだよ」
うーん。
まるで理解できていない顔だね。
まあ、今まで暮らしてきた環境を全否定する考えだからね。