合同講義は楽しいな(1)
さて……次の講義は合同で行われるんだっけ?
大講義室は一階の……ああ、ここだね。
「あ、ペリドット様! こっちです。席をとっておきましたよ?」
「ジャック、ありがとう。遅れちゃったかな?」
ん?
アンジェリカちゃんとココちゃんのいるクラスじゃないみたいだね。
……?
なんだろうね?
向けられる視線に悪意を感じるよ。
クラスメイトはいつも通りだけど……
まさか、世界の補正力?
でも、あれは幼い子にしか効かないんだよね?
「大丈夫ですよ。まだ少し早いくらいです。あ、ヒヨコ様は眠ってるんですね。かわいいなぁ」
「うん。今はお昼頃用のバスケットが無いから抱っこしているの。ぐふふ。ホカホカで堪らないよ」
「あぁ……いいなぁ。オレも抱っこしたいです」
「ふふ。じゃあ抱っこしてみる?」
「いいんですか?」
「あと二ヶ月しかアカデミーにいられないから、その間にヒヨコちゃんを堪能してもらおうと思ってね」
「……寂しくなりますね」
「あ、でも市場には時々出入りするつもりだから、もしかしたらどこかで会うかもね」
「そうですか。どこかで会ったら……もうオレ達の事を忘れてるなんて事無いですよね? そうなったら寂しいです」
「ふふ。絶対にそんな事は無いよ? ジャックも皆の事も絶対に忘れないよ?」
「……っ」
「ジャック、泣かないで? あぁ……皆も泣かないで? 絶対また会えるし、まだ二ヶ月はアカデミーにいるから」
「……はい」
「何あれ……バカみたいね」
「あれだから女がクラスを持つとダメなんだ」
え?
今のって合同で講義をするもうひとつのクラスの人間が言ったの?
「なんて事を言うんだ! 先生の悪口を言うな!」
おぉ……
ジャックが怖い顔で言い返したね。
あ、ベリアルが起きちゃいそうだよ。
「だって、バカなのは事実でしょう? 毎回クラスのテストの合計が最下位なんだから」
……え?
そうだったの?
っていうか、絵に描いたようなモブキャラだね。
たぶん今回が最初で最後の出番になるんだろうねっていうくらい顔が薄いよ。
この世界の人間は西洋風の顔立ちしか見た事がないから新鮮だね。
「それは……講義がなかなか進まないから……」
ジャックが困った顔になったね。
「そんなのは言い訳よ。担任が女だからそうなのよ。わたし達の担任はあなた達の担任と違って男だから毎回二位よ?」
この人間……
うるさいね。
先生を侮辱するなんて……
自分が女なのを知らないのかな?
さてはバカだね?
ベリアルが起きちゃうでしょ?
静かにしてよ。
「あの……そこの人間、黙ってくれないかな? かわいいヒヨコちゃんが起きちゃうでしょ?」
「え? そこの人間ってわたし!? まさかこのわたしをそんな呼び方で……」
「じゃあ、何なのかな? わたしは男とか女とか関係ない国で育ったから時代錯誤な考えに虫酸が走るんだけど」
「え? 何? 虫?」
「はぁ……テストで二位のクラスなんでしょ? まさかそんな簡単な言葉も知らないの?」
「……し、知ってるわよ」
「ふぅん。そう。じゃあ、もう黙るよね?」
「はぁ!? バカクラスのくせに偉そうに!」
「……黙れって言うのが聞こえないみたいだね」
あ……
殺気を出しちゃった。
空気が一瞬振動たね。
ハデスが怒った時みたいになったよ。
うるさかった人間が黙って座り込んだね。
人間には怖かったかな?