皆で調理実習なんて、楽しそうだね
「あの……プリンアラモード? とは……その……わたくしも食べてみたいのですが」
先生もプリンアラモードの話を聞いて食べたくなったんだね。
「じゃあ……明日のピクニックのデザートを皆で作るのはどうかな?」
「え? よろしいのですか?」
「もう、アイスクリームもプリンもできていれば時間もかからないし。盛り付けをするだけなら五分くらいでできるんじゃないかな?」
「なるほど……あの……ですが……このプリンという食べ物がどのように作られるかが気になっていまして。それに、アイスクリームも、もしペリドット様が大変でなければ一緒に作ってみたいと……」
「そうなると、昼食の時間だけだと無理かも……」
「では、午前の最後の講義を調理実習という事にすれば問題ありませんか?」
「わたしは大丈夫だけど……貴族も調理実習なんてするんだね」
「ふふ。はい。学長の方針なのです。貴族も色々と事情のある家庭もありまして、食材から食事を作る方法を知れば領地で活かせるのではないかと」
「なるほど。じゃあ皆でプリンアラモードを作ろうか。調理実習かぁ。楽しそうだよ」
「はい。えっと……食材は何を用意すれば?」
「うーん。卵とヤギのミルクと砂糖……あとはフルーツかな? 生クリームはわたしが用意するよ」
この世界にはバタークリームしかないからね。
お父様にお願いしていつもより多めに買ってきてもらおう。
「ありがとうございます。黄金の国ニホンのクリームはフワフワでとてもおいしくて驚きました」
「生クリームは泡立てるのが大変なの。でも、皆で交代しながら作るのもきっと楽しいよね」
「残り少ない時間で、ペリドット様との楽しい思い出をたくさん作りたいです」
「先生……うん。ありがとう」
作り方を知りたいのもあるかもしれないけど、わたしの思い出作りの為に調理実習をしてくれるのかな?
「ふふ。ヒヨコ様も嬉しそうですね」
「うん。そうだね。あ、そうだ! ぐふふ。ヒヨコちゃんがエプロンを……いや、メイド服の方が……うーん。それとも料理長が被る長い帽子とか? ぐふふふ。堪らないね、こりゃ」
「ペリドット様……お顔が……」
「ふふふ。先生もにやけているね。同じ事を考えていたのかな?」
「はい。やはりここはピンクのメイド服に真っ白いフリフリのエプロンではないでしょうか? 頭には……初日に被っていたボンネットを……ぐふふ。その姿のヒヨコ様がお菓子を作る……想像しただけで知恵熱が出そうですっ!」
「先生! 素敵な考えだね!」
「そうと決まれば早速作り始めなければ」
「え? 先生が作ってくれるの?」
「はい! ヒヨコ様のサイズならすぐに作り終わりますっ!」
「すごいね。先生は何でもできるんだね」
「わたくしの家は貴族といっても下級でして……繕い物は得意なのです」
「そうなんだね。わたしもよく繕い物をしていたよ?」
「え? そうなのですか?」
「うん。鍛錬でズボンの膝が破けたりするから何度も繕ったよ。破れる度に新しい物なんてもったいなくてね……」
「まぁ……ふふ。ペリドット様のそういうところ……とても素敵ですね」
「そうかな? えへへ。幼い時に『物は大事に使え』ってよく言われたの。物にも心があるからってね」
群馬でおばあちゃんがよく言っていたんだよね。
乱暴に扱うのはそれを作った人にも、その物に対しても失礼だって。