肖像画を描こう(4)
「よしっ。じゃあ群馬に行ってくるね!」
お父様……
本当に群馬に行っちゃった。
仕事から逃げられて嬉しそうだったね。
「わたしもこうしてはいられない! 久々に興奮してきたぞ。石膏の準備をしなくては!」
ウリエルも慌てて神殿内の私室に戻ったみたいだね。
あそこの隠し部屋にはペルセポネ(幼女時代)のフィギュアが大量にあるんだよね。
そういえば、ハデスは怒らないのかな?
勝手にフィギュアを作ったら怒り出しそうなのに。
ルゥでもペルセポネでもなくて、月海のフィギュアだからかな?
……ハデスは月海に会った事がないからどうでもいいのかも。
少し寂しいよ。
「(ルミの人形……)」
ん?
ハデスが何か呟いた?
あれ?
ハデスの毛玉姿のしっぽが激しく揺れている!?
もしかして、喜んでいるの!?
まさか、ハデスも幼女に目覚めたの!?
「あら? ウリエルは肖像画を置いていったのね。まぁ。ふふふ」
「デメテル? どうかしたの? あ……ふふっ」
「あらあら、素敵な肖像画ね」
お母様とヘラとヘスティアが肖像画を見て笑顔になった?
そんなに上手く描いてあるのかな?
「ほら、ペルセポネも見て?」
お母様に促されて絵を見ると……
「あ……」
毛玉姿のハデスを抱っこしている肖像画だ。
「ハデス、すごくかわいいね」
「ペルセポネも美しいな。実物はもっと美しいが」
毛玉姿のハデスがしっぽをブンブン振って喜んでいるのが分かる。
「今度は、天族の姿の二人を描いてもらいましょうね」
お母様が微笑みながら言ってくれる。
数千年前には、こんな風に皆に認めてもらえるなんて思いもしなかったな。
たくさんの人達を巻き込んでしまったけど、やっと皆に祝福してもらえる時がきたんだね。
第三地区の皆も、月海にもルゥにも申し訳ない気持ちでいっぱいだけど……
心から思うんだ。
本当にありがとうって。
わたし、絶対に幸せになるからねって。
「今度、第三地区でハデスとペルセポネの結婚の宴を開こうと思うの。天界だと第三地区の皆が参加できないでしょう? 数千年前はわたしは反対する事しかできなかったから。どうかしら?」
お母様が嬉しそうに話しているね。
毛玉姿のハデスが天族の姿に戻ると、穏やかに話し始める。
「デメテル、ありがとう。必ずペルセポネを幸せにする。もう勝手に連れ去ったりはしないから……あの時はすまなかった」
「ハデス……わたしこそごめんなさい。怒りに心を支配されるなんて愚かだったわ?」
「これからは、皆が幸せに暮らしていけるように行動するつもりだ」
ハデスもお母様もお互いを憎しみ合う気持ちがなくなったんだね。
良かった。
これからは幸せに穏やかに過ごしていけるんだね。