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おばあちゃんってお腹がいっぱいになっても『食べろ食べろ』って言うよね

「アイスクリーム……? ってなんですか?」


 前の席のジャックが真っ白いアイスクリームに釘付けになっているね。


「ヤギのミルクと砂糖と卵とかを凍らせた物……かな?」


「へえ! じゃあ、甘いのかな?」


 ふふ。

 ジャックはかわいいね。


「冷たくて甘くて、ソルベよりふんわりしているかな?」


「ソルベ!? オレ食べた事無いんです! ふんわり? あぁ……アイスクリーム……楽しみだなあ」


「ふふ。アイスクリームは冷たいからいきなり食べたらたお腹がビックリしちゃうかもね。先にご飯を食べてからがいいよ?」


「はいっ! この卵のサンドイッチも魚のフライの挟んであるパンもおいしいです!」


「ニホンの皆に伝えておくね? 皆すごく喜ぶよ」


「そうなんですか?」


「うん……ほら、おばあちゃんの家とかに遊びに行くとお腹いっぱいになるまで食べさせられる事ってない? あんな感じで、お腹がパンパンになるまで食べてもらいたいって思う人達なの」


 わたしの場合は、群馬で近所のおばあさんとかおじいさんの家に遊びに行くと『ほれ、食え。ほれ、食え』って夕飯が食べられなくなるくらいお菓子をもらって……夕飯を残すとおばあちゃんに怒られるからお腹がパンパンになったんだよね。


「あはは。確かに母方の祖父母の家に遊びに行くと次から次に食べ物が出てきますね」


「お腹がいっぱいってありがたい事だからね。恵まれた環境なら当たり前のようだけど、ひもじい思いをした事のある人は同じ思いをさせたくなくていっぱい食べてもらいたいのかもしれないね」


「なるほど……確かにそうかもしれませんね。でも、もう食べられないって言うと悲しそうな顔をするから無理して食べて……この前は食べ過ぎて身体が震えましたよ」


「ははは! おじいさんもおばあさんもジャックがかわいくて堪らないんだね」


「はい。本当にかわいがってもらっていて。今度の長期休みには一週間だけ遊びに行く事になってるんです。残りは領地の畑仕事を手伝ったり弟と遊んだりする予定です」


「それは楽しみだね。おじいさんもおばあさんも喜ぶだろうね」


「ジャックは良い子だなぁ。ほれ、こっちのキッシュも食べろ?」


 おぉ……

 おばあちゃんの『孫のようにかわいがるスイッチ』が入っちゃったね。


「ピンクのヒヨコ様、ありがとうございます。モグモグ」


「ほれ、ジャック、こっちのさつまいもの煮たやつも食べろ?」


「ありがとうございます。モグモグ……うぅ……」


 ジャック……

 これ以上食べたらまた身体が震えちゃうよ……


「ピンクのヒヨコちゃん……これ以上食べたらジャックはアイスクリームを食べられなくなっちゃうから……」


「ん? ジャックは若いんだからまだ食べられるよな?」


 ……おぉ。

 でた!

 おばあちゃん目線っ!

 ジャックはアイスクリームを楽しみにしていたからね。

 食べられなくなったらかわいそうだよ。


「ジャック! はい! アイスクリームだよ! 向こうの木陰に持って逃げて!」


「ありがとうございますっ!」


 ふふ。

 慌てて逃げていったね。

 木陰に座って嬉しそうにスプーンですくって口に運んだよ。

 

「うわあぁ! おいしい!」


 ここまで声が聞こえてきたよ。

 本当にジャックはかわいいね。


「なんだ……もう満腹か……」


 おぉ……

 おばあちゃんが周りを見渡して第二の被害者を見つけようとしているね。

 誰も目を合わせようとしないよ。

 ん?


「モグモグ。うまぁぁぁい! これもうまぁぁぁい!」


 ベリアルはすごい食欲だね。

 さっきからずっと食べているよ。


「黄色いヒヨコは、よく食べるなぁ。ほれ、これも食べろ」


 おぉ……

 おばあちゃんがベリアルをロックオンしたね。


「うん! モグモグ」


「これも食べろ」


「うん! モグモグ」


 ……ベリアルが第三地区のお年寄りに好かれる理由のひとつは絶対この食欲だよね。

『孫のようにかわいがるスイッチ』が発動されて食べろ食べろが始まっても嫌な顔ひとつしないでモグモグおいしそうに食べるからね。

 ベリアルのお腹はどうなっているんだろう?

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