わたしはお人好しなのかも……
「書類に目を通して印を押せばいいのよ?」
ヘスティアは簡単そうに言うけど……
「うぅ……わたしにはそんな重要な仕事は無理だよ。だって神様の仕事なんだよ?」
「できるわ? ウリエルもいてくれるし。ハデスもいるでしょう?」
「……そうだけど。でも……」
「(ペルセポネ、ゼウスはやりたい事を我慢できないの。一泊だけしたらすぐに帰ってくるから。お願いよ)」
「うぅ……そんな事を言われても……」
あぁ……
ヘスティアが申し訳なさそうな瞳でわたしを見つめているよ。
「ちょっと……ペルセポネを困らせないで? いきなり神の仕事を任せられても困るわよね? ごめんなさい。気にしなくていいのよ?」
「お母様……謝らないで?」
わたしがやるって言えば皆が助かるのは分かるんだけど……
やっぱり神様なんて無理だよ。
「難しく考えなくていいのよ?」
え?
ヘスティア?
「実際、今だってゼウスはデメテルやウリエルの言う通りに印を押しているだけだし。ウリエルの言う通りに印を押せばいいのよ? それに夕方までにほぼ仕事は終わらせるわ? ペルセポネはハデスとのんびり過ごせばいいの。あ、そうそう。神だけが飲めるお酒があるのよ? 正確に言えば神とその配偶者ね。ハデスに飲ませてあげたら喜ぶわよ?」
「え? 神とその配偶者だけが飲めるお酒? 確かにハデスはお酒が好きだけど……」
「こんな機会は滅多に無いわよ?」
ハデスが喜ぶのか……
いつも迷惑ばかりかけているし。
仕事はほとんどしなくてもいいみたいだし……
「……分かったよ。でも、一泊だけだよ? 絶対だよ?」
「ふふ。ペルセポネなら引き受けてくれると思っていたわ? じゃあ……明後日がちょうどいいわね。三日に一度天界に泊まる日だし、アカデミーも翌日がお休みだから」
「え!? そんなに早く!?」
早すぎて心の準備ができないよ……
次の週のアカデミーの休日じゃダメかな?
「大丈夫よ? ウリエルとハデスの言う通りに印を押せばいいの。ふふ。ペルセポネは真面目なのね。ゼウスなんて初めて印を押す時なんて嬉しすぎて押さなくていいところまでポンポン押して大変だったのよ?」
「……そういうものなのかな? わたしは緊張しちゃうよ」
「ペルセポネなら大丈夫よ? 責任感のある素敵なお姉さんになったもの。遥か昔は病で辛そうだったけれど……安心したわ」
「ヘスティア……わたし……信じて任せてもらうんだよね。うん、よし! 頑張るよ」
「ふふ。その意気よ?」
不安しかないけど頑張らないと。
お父様の仕事をずっと手伝っているお母様にも息抜きをして欲しいし。
ウリエルとハデスの言う通りに印を押すだけか。
……ハデスの言う通りに印を押したら天族が皆鍛錬をする事になったりしないよね?
その辺りは気をつけないとね。
あぁ……
ベリス王に金貨を百枚稼がせる商売を考えて、聖女を幸せの島に埋葬して、お父様の代わりに神様をするんだね。
うわぁ……
考えただけでも大変そうだよ。