金貨を百枚稼がせる商売か
「ヘスティアの機嫌が直る方法はないかな?」
ベリス王ならヘスティアの好みを良く知っていそうだよね。
「そうですねぇ……では……ちょうどあのドレスに合いそうな宝石が手に入りまして。それをプレゼントしてみてはいかがでしょう?」
「ドレスに合いそうな宝石? ……高いんだよね?」
「まぁ……それなりの額にはなりますが……」
「うーん……いくらかな?」
わたしはお金を持っていないから……
「金貨が百枚……でしょうか」
「ええ!? 金貨一枚が十万円の価値だから……うぅ……とてもじゃないけど買えないよ」
「そうですか? ハデス様に頼めば簡単でしょう?」
「確かにハデスなら喜んで出してくれるだろうけど……わたしがヘスティアにお詫びとして渡したいの。だからハデスに頼ったらダメなんだよ」
「なるほど……では、わたしに金貨を百枚稼がせる商売を考えてみませんか?」
「金貨を百枚稼がせる商売?」
「はい。パーティーは今日ですから、宝石は今日お渡ししましょう」
「……それって……もし商売が失敗して金貨を百枚稼げなかったらどうなるの?」
「そうですねぇ……その時はハデス様に……というより神に支払わせてはいかがですか? 張本人ですよね?」
「……お父様は悪い事をしたと思っていないの」
「え? 姉のドレスを破ったのに……ですか?」
「……わたしも驚いたよ……でも、これは……あの……」
「あぁ……(そういう事か……)わたしも以前からそうではないかと……それ以上は口に出してはいけません……相手は父親でもありますが……神ですからね」
「うん……ありがとう。ヘスティアもそれを分かっているから、ずっとお父様を側で支えてきたんだろうけど、今回はあまりに酷すぎて……」
「そうでしたか……悪い事をしていないと思っている相手から高価な贈り物を与えられたら……金で解決させるつもりかと更に腹が立つでしょうね」
「だからね? 幸せの島にある花をキレイに包んでプレゼントしようとしたんだけど……花を渡せる雰囲気じゃなくて」
「なるほど、その花ですか?」
「あぁ……うん。お父様に包んでもらったの。グチャグチャだけど気持ちが籠って見えるかなって……でも、あんなに怒らせちゃったら……もしお父様の事がキライになってヘスティアがいなくなったら……お父様は……耐えられないはずだよ? 家族を何よりも大切にしているから……」
「そうですねぇ……」
「わたしもイヤだよ……わたしもヘスティアが大好きだから、ずっとずっと一緒にいたいの」
「だからぺるみ様から贈り物を?」
「うん。変かな? やめた方がいいかな?」
「……あぁ……あの……いや……良い考え……だと思いますよ?」
「本当!?」
「はい。ヘスティアもそう思っているようですよ?」
「え? ヘスティア?」
あ、いつの間にかわたしの後ろにヘスティアが立っていたんだね。
いつもの優しい笑顔だ。
……少し違うね。
心からの笑顔だ。
「ペルセポネ……すっかり立派なお姉さんになったのね……嬉しいわ」
「ヘスティア、あのね? お父様が……本当にごめんなさい」
「ふふ。大丈夫よ? ペルセポネが謝る事ではないし……今回は父親思いのペルセポネの為に赦してあげましょうね。もう……ペルセポネは本当にかわいいんだから……」
ヘスティアがニコニコ笑ってくれたね。
良かった……
あとは、金貨を百枚稼げる商売を考えないと。
金貨を大量に稼ぐなら、貴族か……王族だよね?
うーん。
真剣に考えないとだね。