第三地区は本当に素敵な場所だね
「晴太郎……辛かったいなぁ」
野田のおじいちゃんが吉田のおじいちゃんに話しかけているね。
「……オレはダメな奴だ。かわいい子孫が……この世界を浄化して亡くなった聖女が……腐ったまま放置されてるのに……ずっと放っておいたんだ……しかも……あの子を……チェルシーも救えなかった……」
吉田のおじいちゃんがすごく辛そうな顔をしているよ。
「聖女を助けんべぇ。なぁ……晴太郎……オレにも分かる。孫の陽太が自転車事故で死んで……辛くてなぁ……どうして年寄りのオレが生きて若い陽太が死ななきゃなんねぇのかって……苦しくてなぁ……晴太郎もおんなじだ……あの時のオレとおんなじ目をしてる……」
「……オレは……この世界を創り出して……皆を苦しめた。同じじゃねぇよ……」
「おんなじだ。オレは晴太郎の友達だぞ? 分かんねぇはずがねぇだろ? 聖女を連れてきて幸せの島に埋葬してやろう。そうだ……デカイ木を植えて……桜の木だ……その木の下で花見をしよう。毎日、毎日……そしたら……聖女も寂しくねぇだろう? デメテルに頼めばずっと咲いてる桜の木を創ってくれるはずだ。な? そうすんべぇ」
「……あぁ……あぁ……そうだなぁ……ずっと咲いてる桜の木か……」
吉田のおじいちゃんが涙目になっているね。
「そうと決まりゃあ……皆! 聞いてくれ! 作戦会議だぞ! 皆で聖女を救い出す方法を考えるんだ!」
野田のおじいちゃんは村議会議員をしていただけの事はあるね。
すごく立派だよ。
それに比べてお父様は……
いやらしいフィギュアを作らせたり、姉のドレスを勝手に着て破ったうえに仕事をしていない事がばれてマンドラゴラの姿で土に埋まっていたのか……
そういえばお父様はどうなったかな?
ヘスティアと一緒にお母様にドレスを直してもらいに行ってから戻ってこないけど。
行き先はドラゴンの島か……
生きて帰ってくるよね?
ドラゴンの赤ちゃんに食べられていないといいけど。
……嫌な予感がしてきたよ。
ヘスティアは見た事がないくらい怒っていたし。
お母様も、仕事をしないで遊んでいた事に呆れていたみたいだよね?
今頃、生まれたてのドラゴンの赤ちゃんの食糧になっているかも……
「おや? ぺるみ様? お顔の色が優れませんね?」
「あ、ベリス王……おはよう。毎日来てくれるんだね」
もう、そんな時間か……
「はい。ぺるみ様の周りには商売になりそうな事がゴロゴロ転がっていますからね」
「ゴロゴロ……なるほどね。あのさ……実は……恥ずかしいんだけど……お父様がヘスティアの今日着るはずだったドレスを破っちゃったの」
「……? 破った? わたしが用意したあのドレスですか?」
「うん。キレイだから着たくなったらしくてね。無理矢理着たら破れちゃったの。お母様の神力で直してもらいに行っているんだけど……ヘスティアが怒っちゃって……」
「なるほど……」
さすがのベリス王も呆れちゃったみたいだね。