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他人の日記って見たら気まずくなるよね

「『かわいいなっ! チェルシーちゃん』……?」


 何これ……

 この本の題名だよね?

 二代前の聖女の事が書いてあって、野田のおじいちゃんが読んで泣いたっていう本だよね?

 

「ずいぶんとファンシーな表紙だね……」


 ピンクの表紙にかわいいウサギとか猫とかの絵が描いてあるよ。

 中もこんな感じなのかな?


 ……おぉ。

 さすがに中は文字ばかりだね。

 キレイな字だ。

 遥か昔のリコリス王の字かな?


 どれどれ?


「ぺるみ、ばあちゃん達も聞きてぇから声に出して読んでくれ」


 そうだよね。

 おばあちゃん達にも聞いてもらおう。

 ん?

 おばあちゃんも、しっかり魔法石のマッサージを受けているね。


「じゃあ、読むね?」


『かわいいなっ! チェルシーちゃん』


 今日、チェルシーちゃんが初めて『王しゃまだいちゅき』と言ってくれた。

 わたしは喜びを禁じ得なかった。

 堪らない……

 くぅぅ!

 この喜びをなんと書き表したら良いのか。

 世界から『リンゴーン』と鐘の音が聞こえるようだった。

 チェルシーちゃん……

 小さなおててがわたしの指に触れると温かく、青い瞳がわたしを映し出すと、瞳の中のわたしは見た事もないような微笑みを浮かべている。

 わたしは今まで気づかなかったが……どうやら幼女趣味……



「うわぁぁぁぁぁ! 何なの!? ただの幼女好きの日記じゃない!」


 野田のおじいちゃんは、これのどこで泣いたの!?


「あぁ……そっちからじゃなくて反対側から読んでみろ」


「……野田のおじいちゃんは分かってて読ませたよね?」


「ははは。ぺるみはかわいいなぁ」


「もうっ! えっと反対側からだよね? 今度は平気だろうね?」


 

『神力がありそうな娘を何人も買った。金を渡すと親は喜んで娘を手放した』


 え?

 拐ってきたんじゃなくて?


『浮浪者の町から幼い娘を拐った事もあった』


 ……読めない部分があるね。

 涙の跡?

 雨?

 インクが滲んで読みにくいね。

 反対側の幼女好きの日記は普通に読めたのに。


『あの子は山奥……小屋に家族と暮ら……いた』


 うーん。

 このページはもう読めないね。

 滲みすぎているよ。


「おばあちゃん、このページは滲んでいてこれ以上は読めないよ?」


「そうか……かなり古い本らしいからなぁ。無理もねぇなぁ。次のページはどうだ? あぁ……この魔法石の爆発はちょうどいいなぁ」


 おばあちゃんは、魔法石を満喫しているね。


「次のページは……うーん。ほぼ読めないね。その次のページは……あぁ……うーん。読めそうなページが無いね……あ、ここから先は滲んでいないね。えっと……」


『名の無いその子に、チェルシーと名付けた』


 名の無いその子?

 確か拐われてきた子は五歳くらいだったよね?

 自分の名前が言えなかった?

 山奥の小屋に家族と暮らしていたんだよね?

 名前が無かったとは考えにくいよね。

 

 確か、吉田のおじいちゃんの息子さんが人間に襲われた時に力が暴走して……

 家族を誰も知らない安全な場所に移動したんだよね?

 時期的に考えて、その安全な場所が『山奥の小屋』かな?

 その小屋から、おじいちゃんの息子さんの子孫が拐われてきた?

 名前の無い子……

 うーん。

 この本からはチェルシーちゃんの小屋での生活の様子は分からなそうだね。

 この先のページには何が書いてあるんだろう?

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