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天界の姉弟の中で一番怖いのは?

「……怒られない?」


 お父様は怒られるのがイヤなのかな?


「怒られても仕方ないよ。悪い事をしたら謝らないとね」


「どうして? お父様は悪い事はしてないのに?」


「え? ヘスティアのドレスを破ちゃったんでしょ?」


「ん? うん。破ったけど?」


 悪い事をしたって分かっていないんだね。


「じゃあ、どうして天界から逃げたの?」


「だって、怒られたくないから」


 お父様は善悪の判断ができないんだ。

『怒られたくないから逃げて、捕まったら謝る』を繰り返しているんだね。

 ヘスティアやお母様やヘラは、それを分かっているからずっとお父様の側にいて守っているのかな?

 火干しにはしているけど、普段は大切にしているよね。

 うーん?


「ねぇねぇ、ペルセポネ。ヘスティアちゃんに謝って帰ってきたら、ペルセポネにもお花をあげるね?」


「え? あ、うん。ありがとう」


「ペルセポネは何色の紙が好きかな? 白も好きだし青も好きだよね? それからベリアルの黄色も好きだよね?」


「うん……そうだね。お父様……」


 お父様は、わたしの身体を作り出す為に巻き込んだ第三地区の皆の魂をこの世界に連れてきて身体を与えた。

 悪い事を悪いって完全に分からないわけじゃないんだよね。


 わたしもお母様やヘスティアみたいに穏やかな心でお父様に寄り添って……


「ああ! いた! ゼウス! 赦さないわよ!?」


 ヘスティア!?

 今まで見た事がないくらい怒っている!? 

 いつもの優しいヘスティアじゃないよ?


「うわあぁん! ヘスティアちゃんが怒ってるぅ!」


「当然でしょ!? あのドレスを手に入れる為にどれだけ苦労したと思っているの!?」


「うわあぁん! ヘスティアちゃんが怖いよぉ!」


「ああ! こんなに破いて! もう! とりあえず一回火干しにするわよ!?」


 とりあえず一回?

 まだ何回かするつもり?


「ぎやあああ!」


 あぁ……

 怖すぎて見ている事しかできないよ。


「ほら、早くデメテルの所に行くわよ? すぐに直してもらわないと。今日は天界でパーティーがあるんだから」


「え? パーティー? ダメだよぉ。パーティーだけは絶対にダメ! 男どもがヘスティアちゃんに近寄るのは絶対ダメだから!」


「ふふふ。普段は偉そうな天界の奴らが次々にひざまずいていく姿は堪らなく快感……」


「うわあぁぁぁ! かわいいペルセポネの前で変な事を言わないでよぉ!」


「あら? ふふふ。ペルセポネもハデスともう……」


「うわあぁぁぁぁ! まだなの! まだだから変な事を言わないでぇ!」


 お父様がかなり慌てているね。

 すごい……

 火干しされて炎が身体を包み込んだのに火傷さえしていないよ。

 さすが神様だね。

 

 ……これが、ポセイドンが言っていたヘスティアの本当の姿なんだね。

 普段の優しい姿とは別人に見えるよ。

 こっちが素って事だよね?

 

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