お父様は本当に手がかかるよ
「じゃあ、幸せの島に戻って花を摘んでこよう? ヘラの機嫌を直さないとね」
わたしがお父様の代理で神様をするなんて絶対無理だから!
この話はもう終わりにしよう。
「ええ? お願いだよぉ。ペルセポネェ……」
「ダメなものはダメなの! ほら、早く幸せの島に戻らないとヘラに見つかっちゃうよ?」
「うぅ……じゃあ、空間移動で行くからお雪ちゃんは目を閉じてね? はぁ……群馬の温泉に行きたかったなぁ」
まだ言っているよ。
温泉には行って欲しいけど、ヘラが火干しを始めたら困るんだよ。
それに、お金なんて使った事が無さそうなお母様達が食い逃げをしちゃいそうで心配だし……
人化したとしても、お母様達はキレイだから注目されそうだし。
変な事をしたら目立っちゃうんだよ。
だから絶対に行かせるわけにはいかないんだよ!
「ペルセポネェ……本当にダメ? 群馬の温泉に行きたいよぉ」
まだ言っているよ……
「ダメったらダメ! ヘラがいきなり火干しを始めたらどうするの?」
「うぅ……確かにそうだけど……」
「向こうの世界には神力とか魔力は無いんだから気をつけないと」
「うぅ……でも、でもぉ……」
「はい。この花だよ? お父様はマンドラゴラの姿の時に適当にばらまいていたのを忘れていたんだね」
っていう記憶操作だったよね。
マンドラゴラの一人がお父様だった事になっているみたいだ。
「えへへ。節分の豆まきみたいにしたんだよ」
お父様は完全に記憶操作されているね。
あれ?
どうしてわたしは記憶操作を解除できたのかな?
うーん?
あとでおじいちゃんに訊いてみよう。
「お父様は毎日マンドラゴラの姿で何を考えて暮らしていたの?」
「え? そんなの決まってるよ。ペルセポネがかわいいなって思ったり、あとはプリンは一日一個じゃ少ないなとか、かわいい人魚が島に遊びに来ないかなとか……ぐふふ。人魚はやっぱり貝殻のブラ……」
「なるほど……ヘラの前でその話は絶対にしないでね」
「今、話を遮ったよねっ!? ブラジ……」
「ヘラが聞いたら確実に火干しされるよ?」
「うぅ……分かったよ」
「お父様が花を摘まないと意味がないんだよ? 大好きな人が自分の為に花を摘んで気持ちを込めてプレゼントしてくれるから嬉しいんだから。ヘラ達は欲しい物は何でも自分で手に入れられるから、プレゼントされるなら気持ちの籠った物が嬉しいはずだよ?」
「なるほど……分かった! かわいく包んでみるよ」
「うん。ふふ。お父様はヘラ達の好きな色を知っているのかな?」
「好きな色? ヘスティアちゃんは白が好きかなぁ。デメテルちゃんは淡い紫で、ヘラちゃんは赤だよ?」
「お父様はすごいね。よく知っているね」
「えへへ。ちなみにハデスとポセイドンは青が好きなんだよ」
「へぇ。空と海の色だからかな?」
「ポセイドンは海の色だからかもしれないけど、ハデスはペルセポネの瞳の色だからじゃないかな?」
「……! わたしの瞳の色?」
「ペルセポネ……ハデスは信頼できるから……安心して任せられるよ。うぅ……お父様のペルセポネがぁ……他の男とぉ……うわあぁん! やっぱりイヤだよぉ。誰にも渡したくないよぉ!」
……お父様はまた泣き出したね。