肖像画を描こう(2)
「描き終えました。あとは色をつけるだけです」
わたしの肖像画の下描きを終えたウリエルが無表情で片付け始める。
「え? もう? 五分も経っていないのに?」
「はい。では失礼します」
ウリエルは肖像画を描くのが面倒だったんだろうな。
すごくつまらなそうだよ。
「あ、うん。ありがとう」
ウリエルが執務室から出て行くとお母様とヘスティアとヘラが執務室に入ってくる。
「あら? ウリエルはもう描き終えたの?」
お母様が、書類の山になっているテーブルにお父様を連れて行って椅子に座らせる。
「うん。五分くらいで描いちゃったよ? あとは色を塗るだけだって言っていたよ?」
「そう。さすがウリエルね。仕事が早いわ。さぁ、ゼウスもこの書類の山を片付けないとね?」
「え? 嫌だよ! ペルセポネと遊ぶんだから! ね? ペルセポネ」
あぁ……
お父様は、これから仕事なんだね。
「お父様? わたしとは毎日会えるから今は仕事をしようね?」
「うぅぅ……お父様もペルセポネと一緒にお茶をしたいのにぃ」
そんな、涙目になりながら言われたら……
「……お母様? お父様の仕事はお茶をしてからじゃダメかな? 皆を空間移動して疲れているだろうし」
「ペルセポネ……うわあぁん! 優しいよぉ! かわいいよぉ!」
お父様……
仕事は先延ばしになっただけで後でやらされるんだよ?
こうして皆でお茶を飲む事になった。
ハデスは毛玉の姿で嬉しそうにしっぽをブンブン振っている。
「それにしても、ヨシダさんが初代の神のウラノスだったなんて。ペルセポネはいつから知っていたの?」
お母様がお茶を飲みながら尋ねてくる。
「皆と同じ日だよ? 他にこの事を知っているのは、前グリフォン王だけだよ? 一緒にいる時におじい様が教えてくれたの」
「そうなのね。ペルセポネが数千年前に天界にいた時には、よく会いに来てくれていたの?」
「うーん。一か月に一度くらいだったかな? 今思えば、定期的にファルズフの薬の解毒をしてくれていたんだろうね」
「そう……」
「黙っていてごめんね? わたし以外にバレたら消滅させられちゃうって言って泣かれて……だから言えなくて」
「いいのよ? だいたい想像できるわ? あのヨシダさんだから。でも、少し変わっているけれど優しい人よね? ずっと見てきたから分かるわ」
「うん。裸踊りをする以外はすごく正しい人だよ?」
「正しい……そうね。あぁ……ごめんなさい。裸で寝っ転がってジタバタする姿を思い出して……」
「うん。おじい様は群馬でもあんな感じだったよ。ね? お父様?」
「晴太郎は、いつもああだったよ。でも一緒にいるとすごく楽しかったんだ。なんとなく似た者同士っていうか……だからお父様は『おじい様』じゃなくて『晴太郎』として接するつもりだよ? 晴太郎もその方が嬉しいだろうし」
なるほど。
お父様の言う通りだね。