結局おいしければなんでもいいんだよね
「……お前ら、何やってるんだ?」
この声は……
ベリアルが起きてきたんだね。
「ベリアル! すごいの! すごいんだよ! この巨大桃のスイッチを押すと口から小さい桃が出てくるの!」
「……なんか……『オエ』って言ってたぞ? ……よくそんなもん食べられるな」
え?
ドン引きしているの!?
こんなにおいしいのに!
「ひとくち食べてみてよ! すごいんだよ! とにかくすごいの!」
「……オレはいいよ」
「ええ!? 食べないの!? こんなにおいしいのに!」
「だって……気持ち悪いだろ」
「いいから! 気にしないで食べてみてよ!」
「気になるだろ! 普通の奴はそんな『オエ』って言いながら吐き出したモモなんて食べないぞ!」
「え? わたし達が普通じゃないって事……?」
吉田のおじいちゃんは確かに普通じゃないよね。
雪あん姉はワイルドだから食べても問題ないよ。
わたしは……うぅ……確かに変態だよね……
お母様は……あ……
「わたしが普通じゃない……? そんな……まさか……わたしは正常よ……」
かなり動揺しているね。
「え? デメテルも食べてたのか!? いや……デメテルに言ったんじゃないんだ! ぺるみに拾い食いは良くないって教えようとして……ごめん! デメテルは正常だから……」
ベリアルがお母様に必死に謝っているね。
……チャンスだね。
ふふ。
桃をクチバシにさしちゃえば、このおいしさが伝わるよね。
「うわあぁ! 何するんだ!? ……!? うまあぁぁぁぁい! なんだこれ! 旨すぎるだろ!」
「ふふふ。そうなんだよ。なんと、このおいしい桃が、このヘソのスイッチを押せば食べ放題なんだよ!」
「うわあぁい! 食べ放題だ! モグモグ……」
「オエッ! オエッ! オエッ! オエッ! オエッ!」
「えへへ。この声さえ気にしなければ全然食べられるぞ! デメテル、ありがとう! モグモグ……」
ふふ。
ベリアルはご機嫌だね。
さっきまでは食べたくないって言っていたのに……
激かわだよ。
ぐふふ。
ぐふふふ。
「あぁ……わたしじゃないのよ。ポセイドンなの。『モモの木』が欲しいって言ったのを『モモ大きい』って誤解したらしくて……それでこうなったの……」
「……なんだそれ。でも、すごく旨いから誤解でもなんでもいいや! えへへ。旨いな! ゴンザレス達もすごく嬉しそうだ」
確かにゲイザー族の皆が喜んで食べているよ。
ベリアルは、すっかり素敵なお兄さんになったね。
……それにしても、巨大な桃が口から小さい桃を『オエ』って言いながら吐き出すって、ポセイドンは想像力が斜め上にいっているね。
ある意味天才なのかもしれないよ。