ハデスと天界の部屋で(1)
「うわあぁん! ペルセポネェ! 怖かったよぉ。ぐすん」
天界に戻ってきたらお父様が泣きながら抱きついてきたね。
「もう大丈夫だよ? 泣かないで?」
「ペルセポネェ……えへへ。良い匂いだなぁ」
おぉ……
がっつりスーハーしてくるね。
「ゼウス……冥界に行きたいか?」
ハデスの殺気がすごいよ。
「ええ!? それって殺……うわあぁん! もう吸わないからぁ! 赦してよぉ。ぐすん」
このお父様が強いのか。
いつも、ヘスティア達に火干しされたりする姿しか見ていないから信じられないね。
「あらあら、ゼウスは今からわたし達と楽しい事をして遊びましょうね。ハデスとペルセポネは部屋で休んでね? 明日もアカデミーだから」
ヘスティア……
お父様を火干しするつもりだね。
「え……嘘……嫌だよ……うわあぁん! ペルセポネェ! 行かないでぇぇ!」
「さぁ、我らは行こう。ゼウスは楽しく遊ぶらしいからな」
ハデスが悪そうに笑っているね。
「う……うん。じゃあ……皆……おやすみ」
お父様は強いらしいから大丈夫だよね?
明日の朝に行方不明になっている事は無いよね?
「はぁぁ……今日も疲れたよ……」
フカフカの豪華なベットに横になるとハデスが優しく髪を撫でてくれる。
「そうだな……今日も色々あったからな」
「……吉田のおじいちゃんは、ずっと自分を責め続けていたんだね」
「そうだな。だが……これからは第三地区でおばあさんと幸せに暮らすだろう」
「ふふ。そうだね」
「ひとつずつ、解決している……大きな問題も、小さな問題も。だが……本当にいいのか? ヘリオスが結婚したら人間と距離を置くのか?」
「……うん。わたしは天族だから……そうしないといけないんだよ」
「最期の時は……会いに行くといい。天族の姿でな……」
「天族の姿で?」
「本当のペルセポネの姿で会うべきだ」
「本当の……わたしの姿……」
「人間の一生はあっという間だ。シャムロックのおばあさんとおじいさんは……もう長くは生きられないだろう」
「……うん」
「後悔の無いようにな」
「ありがとう……でも……耐えられるかな? わたし……また心が弱っちゃいそうだよ」
「わたしが支える……それに……その頃には……わたし達には子が授かっているはずだ。ペルセポネは今よりも心が強くなっているだろう」
「赤ちゃん?」
「あぁ……わたしも『ルゥ』が死の島に初めて現れた時、なんとしてもこの子を守りたいと思ったものだ。更に強くならねばと鍛錬を増やしたほどだ」
「ハデスはすごく強かったのにもっと鍛錬したの?」
「大切な存在を守る為ならば苦労とは思わない。まさか、あの赤ん坊の『ルゥ』がペルセポネだったとはな」
「ふふ。本当にそうだね。わたしも今となっては不思議な感覚だよ」
懐かしいなぁ。
あれから十五年経ったんだね。