人魚と約束~後編~
人魚が怯え始めたね。
金貨五十枚が大金だっていう事は分かるんだね。
「恐ろしい事なんてさせないよ? さっき見て分かったんだけど氷の魔法石を使っていた人魚はあなただよね?」
「え? ああ、そうだ。攻撃したから怒っているのか?」
「怒ってはいないよ? お願いがあるの。この第三地区の皆はわたしの大切な人達なの。だから毎日来て氷を降らせてマッサージして欲しいの」
「そんな事でいいのか?」
「そりゃ助かるなぁ。魔法石の氷の魔力が切れたらオレが魔力を入れてやろう」
おばあちゃんがベリアルをお風呂に入れながら話し始める。
「え? 人間なのに魔力があるのか?」
「あるぞ? この地区に住んでいる奴は皆ひとつずつ魔力が使えるんだ」
「……? 不思議な島だな? そんな事があるのか? じゃあ、娘さんが氷を降らせたらいいんじゃないか?」
「娘さん? オレが娘? あはは! そりゃ、オレにもできるさ。ぺるみはなぁ、人魚達が人魚の島からこの島に遊びに来る口実を作りたかったんだ」
さすが、おばあちゃんだね。
全部お見通しなんだ。
「うん。人魚の島から外に出るには最初は勇気がいると思うの。でも何か約束があれば出かけやすいかと思ったんだ。嫌だったかな?」
「そこまで考えてくれるなんて……天族は魔族を嫌っていると思っていたのに」
人魚の言う通りだね。
魔族と天族は仲が悪いみたいだから。
でも……
「嫌いじゃないよ? わたしは……」
「ぺるみ。人魚を連れて来たってヴォジャノーイ族から聞いたよ。あぁ……人魚の皆、久しぶりだね」
魔王をしているお父さんが歩いてくる。
「魔王様!」
「亡くなったと聞いた時には悲しくて……復活おめでとうございます」
「また会えて嬉しいです!」
「うん。ボクも皆に会えて嬉しいよ?」
「この娘さんが我ら人魚に勇気を与えてくれました」
「天族は嫌いだったけど、この娘さんは好きだな」
「前ヴォジャノーイ王の鍛錬仲間だしな」
「ああ、この子はボクの娘なんだよ? ぺるみっていうんだ」
「え? でも、天族の翼が生えているし……」
「そうだよな?」
「どういう事だ?」
「今から全部話すよ。広場だと人魚達が上がれないから、皆波打ち際に集まってくれるかな?」
第三地区にいた全員が波打ち際に集まる。
お風呂から出たベリアルが吉田のおじいちゃんの風の力でフワフワに乾かされている。
あぁ……
吸いたい。
絶対にメイプルシロップみたいな匂いだよね。
我慢できる自信がないよ。
それから、お父さんはわたしが異世界でお父さんの娘として産まれてこの世界に来た事、今は天族の身体を取り戻した事を話してくれた。
「じゃあ、この娘さんは魔王様の……じゃあ姫様じゃないか!」
「まずい! さっき攻撃しちまった!」
「あぁぁ……どうしたら」
「大丈夫だよ? 気にしないで? わたしは人魚の皆と仲良くなりたいの。父親が魔王だからってわたしも偉いわけじゃないでしょ? だから友達になってくれたら嬉しいな」
お父さんは頑張って魔王になったんだから、わたしは何も頑張っていないのに威張れないよ。
「姫様……」
「それとね? わたしの事は、ぺるみって呼んで欲しいな。もう友達だから」
「……はい」
「これからよろしくお願いします」
「ぺるみ様、本当にありがとうございます。これからは毎日氷を降らせに来ます」
「うん。ありがとう」
こうして、十六人の人魚達がご近所さんになった。
人魚の島が移動してきたのはわたしが天界に行った後で見てはいなかったけど、水の精霊のネーレウスのおじいちゃんが第三地区の隣に引っ張ってきてくれた。
ご近所さんが増えてまた賑やかになりそうだね。




