自分の命が大切な人達の命と繋がっているという恐怖
「分からねぇなぁ。でも、可能性は高いなぁ。そうならねぇように、じいちゃんはベリアルを天界に送った。そのせいでベリアルを苦しめちまった……じいちゃんは愚かだなぁ。今になってヒヨコになったベリアルを甘やかしても赦されねぇのに……ぺるぺるに対してもそうだ。天界にいたぺるぺるに毒を飲ませて……ファルズフに命を奪わせちまった。月海は魔素で苦しめたあげく溺死させて、ルゥは浄化のせいで生きられなくなっちまった。今は……こんなにも心を苦しませて……本当にすまねぇなぁ」
吉田のおじいちゃんが辛そうにしているね。
でも……
「おじいちゃんは全ての時にわたしを助けようと側にいてくれたよ?」
「ぺるぺる……」
「わたし……あの時、幸せの島で自殺して……今になって身体が震えるの。今、全てを知って、もし……本当に嫌だけどベリアルまで亡くなったら……この世界は終わっていたかもしれないんだね。おばあちゃん達やルゥの家族も……アカデミーの友達も、皆を巻き込んじゃうところだったよ」
「そうだなぁ。ぺるぺるもベリアルも天族だから自害したら魂も身体も消えちまうからなぁ。そうなればもしかしたら、皆消えちまったかもしれねぇなぁ」
「怖いよ……皆の命がわたしとベリアルにかかっているなんて」
「また、重荷を背負わしちまったなぁ」
「おじいちゃんを責めているんじゃないの……わたしの命の価値が上がった……違うかな? 上手く言えないけど、絶対に死んだらいけないって思うの。もちろん、この事が無くてもお父様やお母様や家族が悲しむから絶対に命を粗末にしたらダメだって思ってはいたけど……」
「そうだなぁ。『死ぬ』って事は……先に逝く者と残された者とで捉え方が違うかもしれねぇなぁ」
「……ルゥの身体にいた時に思ったの。あぁ……もうすぐ死んじゃうんだなぁって。『死ぬ時に苦しくないといいなぁ』自分に対する思いはそれくらいだったの。でも……ハデスやお父様やお母様、第三地区の家族に対してはもっと別の感情があったの」
「別の感情……」
「うん。わたしが死んだらハデスはまた後を追うのかな……とか。お母様やお父様をまた苦しめちゃうんだろうな……とか。群馬ではわたしがおばあちゃんを見送ったけど今度はおばあちゃんにあの辛い思いをさせちゃうんだろうな……とか」
「ぺるぺる……」
「もう、何があっても絶対に自殺なんてしないよ? わたしは遥か昔の事実を知っても耐えられるだけの心の強さを持つ事ができたの」
「色々あったからなぁ」
「……うん。わたしが生きる事でこの世界が守られるのなら絶対に生き続けるよ」
「そうだなぁ。ぺるぺるは強くなったなぁ」
「えへへ。皆が見守ってくれたお陰だよ」
「そうか、そうか。でも、忘れるな? この世界の補正力は弱いながらもまだ続いているからなぁ。小さい子供には有効なはずだ。何か仕掛けてくるかもしれねぇからなぁ。油断はするな?」
おじいちゃんの言う通りだね。
いつ何が起きてもいいように気をつけないとね。




