ハデスはうさちゃんを好きじゃないみたいだね
「おじいちゃん……そんな事があったなんて」
ルゥのおじい様は『創り出された子』に殺害されていたんだね。
ルゥの父親は、どこまで知っていたんだろう。
名君で、立派な父親の最期の姿がそれか……
殺害された父親の姿に心が耐えられなかったんだね。
だから、リコリス王国は悪い方に進んでしまったんだ。
「とりあえず、うさちゃんを連れてこよう。海の中でずっと眠り続けてるからなぁ」
吉田のおじいちゃんはうさちゃんの眠る場所を知っているんだね。
久しぶりにうさちゃんに会えるんだ。
もう捜さなくていいってグリフォンのお兄ちゃんに言わないとね。
「カーバンクル……あいつが戻ってくるのか」
ハデスはうさちゃんが嫌いなのかな?
真っ白いフワフワの毛に真っ赤な瞳で、いつもわたしにぴったりくっついてウトウトしかしていなかったけど。
今の話だと『吉田のおじいちゃんの息子さん』が闇の力を入れた魔法石が、うさちゃんの額に付いていた宝石なのかな?
「ハデスは、うさちゃんが嫌いなのかな?」
「え……あ、いや、ペルセポネの大切なモフモフだからな、嫌いではないが。カーバンクルは、ペルセポネと仲良くしようとすると邪魔ばかりしてきたからな」
「そうだったかな?」
「あいつは、やり方が上手かったからな。少し前のハーピーの息子に似ている。ペルセポネの前ではかわいがって欲しくて猫を被っていたのだ」
「そうなの? 全然気づかなかったよ」
「……子を授かる時期がさらに遅くなりそうだ」
「え? ハデス?」
「だが……海の事は全て知っているつもりだったが全く気づかなかったな。どの辺りの海に眠っていたのだ?」
「海に落ちてからずいぶん経つからなぁ。深くに埋まっちまったんだ。だから人間に見つからずに済んだんだけどなぁ」
吉田のおじいちゃんは、うさちゃんを遠くから見守ってくれていたんだね。
「できればそのまま埋まっていて欲しいが……」
ハデス……
心の声が口から出ちゃっているよ。
「まぁまぁ、そう言うな。ペルセポネを愛している者同士仲良くしねぇとなぁ」
「……ペルセポネの為なら仕方がないか」
「よぉし! じゃあ、今から行くか! かわいい孫とひ孫と海で遊べるなんて……じいちゃんは幸せ者だなぁ」
吉田のおじいちゃんは、まだわたしが天界に住んでいた頃から海で遊びたいって言っていたからね。
「おじいちゃんは、海で遊ぶのが好きなの? 群馬には海がなかったから……」
「んん? 海も好きだけどなぁ、別に行き先はどこでもいいんだ。ただ、家族と出掛けたいだけだからなぁ。それに、海に行くって言っても水中だからなぁ。うさちゃんは魔法石の姿でかなり深くに埋まっているし、掘り返すと砂が視界を塞ぐだろうからなぁ。砂浜で水遊びってわけにはいかねぇぞ? まあ、元々光が届くような場所じゃねぇけどなぁ」
「そうなんだね。あ、息がそんなに続くかな? 空間移動で海面に出て、息を吸ったらまた海中に空間移動をするの?」
「ぺるぺるはかわいいなぁ。じいちゃんは初代の神だからなぁ。水の中でも息ができるようにしてやろうなぁ。ヴォジャノーイ族だった頃のハデスちゃんがやってたみてぇにしてやるぞ?」
「うわぁ! あれ、楽しかったから嬉しいよ」
「そうか、そうか。かなり深く潜るからなぁ。見た事ねぇ魚もいるかもしれねぇぞ?」
「かわいい魚がいっぱいいるかな? ベリアルにも会わせてあげたいよ」
ベリアルは魚がかわいいみたいだからきっと喜ぶよね。