人間の犯した過ち(1)
今回は『吉田のおじいちゃん』でもある『初代の神』が主役です。
あれは……二十年位前だったか。
ぺるぺるがまだ群馬にいた頃の出来事だ。
リコリス王国の先々代の王。
つまり『ルゥ』のじいちゃんだなぁ。
そいつが、とある娘に殺されたんだ。
今は、とある娘って事にしといてくれ。
その娘は……ずっと娘だったんだ。
そうだなぁ……
驚くほど長い間ずっと娘だったんだ。
皆は二代前の聖女がとある洞窟で保存されているのを知ってるよな?
あれは……じいちゃんの息子の子孫だ。
もちろん、じいちゃんにとってもかわいい子孫だぞ?
そして……
そうだなぁ。
あの事から話さねぇとダメだなぁ。
じいちゃんの息子は魔素にやられて死んだ。
いや、正確に言えば冥界に行かねぇようにじいちゃんが自害させたんだ。
聖女であるじいちゃんの子孫は、浄化を終えると……
亡くなったんだ。
残念だけどなぁ、聖女は毎回そうなっちまうんだ……
息子が死んだのはその後だった。
体内の魔素は聖女じゃあ、祓えなかったんだなぁ。
息子は魔素に苦しみながらもこっそり聖女の埋葬されたであろう場所を見に行った。
でも……その場所に聖女の亡骸は無かったんだ。
そして、知っちまった。
聖女の亡骸が神官の力で腐らないよう別の場所に保存されていたとなぁ。
息子は人間を恨み、苦しみ、聖女を助け出そうとした。
でも……
息子は思ったんだ。
もしかしたら、聖女が蘇るかもしれないと。
人間は聖女を蘇らせようと遺体を保存した。
息子は魔素に苦しみながらも、聖女を蘇らせる方法を考えた。
でも、息子は自分が長くは生きられねぇ事に気づいていたんだ。
『死者を生き返らせる事ができるのは闇の力だ』
息子は天界の事を知らねぇからそう思ったんだろうなぁ。
実際、天族なら死者を蘇らせる事ができる奴もいるからなぁ。
天ちゃんやぺるぺるもできるだろう?
他の奴には、なかなか難しいだろうけどなぁ。
息子は天族だけど闇の力を持っていた。
そうだなぁ……
分かりやすく言えば……
『星治が使っている古代の闇の力』
あれは、息子が亡くなった時にじいちゃんが息子の身体から抜き取ったんだ。
あの力が、亡くなった息子の身体から解放されたら大変な事になるからなぁ。
しばらくは、じいちゃんの身体の中に置いておいたんだけどなぁ。
あまりに強い闇の力で、じいちゃんには抑え込めなくてなぁ……
天界の奥に隠したんだ。
それを、星治が使っていると知った時には驚いたなぁ。
あれだけの力を体内に入れておくのは生身の人間には厳しいからなぁ。
息子は生きている間に魔法石に闇の力を入れ込んだ。
人間に渡して生き返らせる方法を見つけ出させる為になぁ。
息子の残りの寿命じゃあその方法は導き出せねぇと考えたんだろうなぁ。
でも、あまりに強過ぎた闇の力で魔法石は砕けちまったんだ。
その欠片は塵になって消えたんだけどなぁ、ひとつだけ小さな物が残った。
そして……その欠片は魔族の姿になった。
いや、違うなぁ。
聖獣と言うべきか?
……今が話す時だなぁ。
その聖獣は……
うさちゃんだ。
天界や冥界でずっとぺるぺるの側にいたあのうさちゃんだ。
うさちゃんは創られてからずっと息子の側にいたが、息子が亡くなると魔法石の姿に戻り幸せの島で長い眠りについた。
そして、息子の闇の力を天界に隠しに行くと、その側でまた眠り続けたんだ。