ベリアルをお兄ちゃまって呼びたいだけなのに
「違うよ! ぺるみが変態だから迷惑してるんだよ!」
うぅ……
ベリアルは迷惑だったんだね。
「ははは! そうか、そうか。仲良しだなぁ」
おばあちゃんは嬉しそうだよ。
「だから、違うんだよ!」
「いいじゃねぇか。ぺるみは群馬にいる頃、弟か妹が欲しいって言ってたからなぁ。ベリアルがかわいくて堪らねぇんだよなぁ」
「ええ!? オレが弟? 嫌だよ! むしろオレの方が兄ちゃんだと思うし!」
「ははは! そうか、そうか。かわいい兄ちゃんだなぁ」
……!?
かわいいヒヨコちゃんがお兄ちゃん!?
ベリアルから言ったんだからそう呼んでもいいんだよね?
あ、でも待って?
『お兄ちゃま』いや、スウィートちゃんみたいに『お兄しゃま』もありだね。
『にぃにぃ』とかもいいし。
くぅぅ!
迷っちゃうよ。
「ぺるみ……お前……今度は何の想像をしてるんだ?」
「え? ベリアルをなんて呼ぼうか考えていたんだよ? やっぱりお兄ちゃまかな? ぐふふ」
「ベリアルって呼べ!」
「え? でも、今……」
「お前は甘やかすとつけあがるからな。ベリアルって呼べ!」
「うぅ……はい。あ、でもさ、人間がいない時はお兄……」
「ダメだ!」
「そんなに強く否定しなくても……」
「お前には兄ちゃんなんて呼ばれたくないんだよ(やっぱりぺるみはオレの事をヒヨコとしてしか見てないんだな)」
「え? よく聞こえなかったけど……ベリアルって呼ばれたいって事?」
「(聞こえたのか!? 恥ずかしい)そ……そうだ! オレはぺるみの兄ちゃんじゃないからな」
ベリアルが慌てているね。
どうしたのかな?
「分かったよ。あ、そうだ。明日の朝は少し早く来てイチゴジャムのクッキーを作るからね」
「え? 本当か? やったぁ!」
「今日ね? ベリアルが大好物のクッキーを『はんぶんこ』してくれてすごく嬉しかったの。明日は皆で食べたいからたくさん作るね。皆で食べるともっともっとおいしいんだよ?」
「そうだな。ゴンザレスにも食べさせてあげたいし。そういえばハデスと魔王城に行ったけど帰ってこないな。まさか、虐められてないよな? 心配になってきた。迎えに行かないと! オレはゴンザレスの兄ちゃんなんだ」
「ふふ。大丈夫だよ。ゴンザレスはベリアルの大切な弟なんだから誰も虐めないよ?」
「確かに皆優しいけど……でも心配なんだ。もしハデスがゴンザレスを鍛えるとか言い出したら……かわいいゴンザレスはオレが守るんだ」
「……それは怖いね。わたしからもハデスに鍛錬をしないように伝えておくよ」
「絶対だぞ! ハデスは皆自分と同じ鍛錬をできると思ってるんだ。そんなわけないのに……あの鍛錬を思い出したら身体が震えてきた」
「うん……あの鍛錬は二度としたくないよ。あ、ゴンザレスが帰ってきたね」
ハデスとお父さんと他のゲイザー族も一緒だね。
「うわあぁ! ゴンザレスがいっぱいいる! かわいいなぁ」
「ゴンザレスの種族はもう五人しかいないんだって」
「そうなのか……ゴンザレスも寂しいだろうな」
「これからはベリアルがいてくれるから寂しくないね」
「……家族か。えへへ。オレに家族ができるなんて夢みたいだ」
ベリアルはすごく嬉しそうだね。
「皆で楽しく賑やかに暮らせたらいいね」
「うん! ゴンザレスゥ! 他の皆も今日はオレと一緒に寝ような!」
令嬢誘拐事件もシャムロックのおじいちゃまの事も解決したし、あとは二ヶ月後の『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』までのんびり過ごせるかな?