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人魚と約束~前編~

「では、我々は今あった事を魔王様に伝えてきます。人魚達も一緒に行こう」


 ヴォジャノーイ族のおじちゃん達が海に入っていく。

 

「ちょっと待て! なんとなく忘れられているみたいだが、オレの金を返せよ!」


 あ、そうだった。

 海賊の魚人族は貸していたお金を返して欲しかったんだっけ?


「はぁ!? まだそんな事を言ってるのか? あんなのもう時効だろ?」


 うわあぁ……

 この人魚は返すつもりが無いみたいだね。


「ふざけた事を言うなよ!? オレが勝ってお前が負けたんだ! オレの勝った分は今すぐ払ってもらうからな!」


 賭けをして勝った分のお金を払ってもらえなかったっていう事かな?

 でも、かなり前の話だよね?

 すごい大金を賭けていたのかな?


「小さいヤローだな! 金なんかあるわけないだろう! あれから人魚は大変だったんだ!」


「はぁ!? ふざけるなよ! あんな危険な島を作って遊んでたくせに!」


「はっ! お前も前ヴォジャノーイ王の鍛錬を受けてみろよ! オレはもう賭け事から足を洗ったんだ」


「ぷはっ! 人魚が足を洗っただって!」


 吉田のおじいちゃん……

 少し黙ろうか?


「えっと……人魚と海賊の魚人族は賭け事をして、その取り分を払ってもらえなかったっていう事でいいのかな?」


「そうなんだよ。聖女様!」


 魚人族は、そんなにお金が欲しいのかな?


「でも、人魚はお金が無いんだよね?」


 だから、払えないっていう事だよね?


「そうだ。賭け事をしないなら金なんかいらないからな」


 おぉ!

 人魚は、すっかり開き直っているね。


「魔族はお金を使わないって聞いていたんだけど?」


「そうだな。人間の使う金とは違うな。貴重な物を金として使っているんだ」


 海賊の魚人族は人間と一緒に暮らしているから、人間の使っているお金の価値を知っているんだよね。

 お金の代わりに何か貴重な物を賭けたのかな。


「貴重な物? 何かな?」


「貴重な物だから今は手元に無いんだ。最近は全く見ていない。だからどうしても手に入れたいんだ!」


 そんなに貴重な物なんだね。

 プレミアがついている、みたいな感じなのかな?

 だったら余計に欲しくなっちゃうよね。

 

「宝石みたいな物かな?」


「いや、違うんだ。魔族……といっても、一部の者達の間なんだが、言い伝えがあるんだ。聖獣の緑の羽根は傷を治し呪いを解くってな」


 緑の聖獣の羽根?


「その羽根は一枚で金貨十枚分の価値があるらしい」


「一枚で金貨十枚!? それ本当!?」


「オレはあの時その羽根を五枚もらえるわけだったんだ。それなのに、偽物を渡してきたんだ。その辺に落ちてた羽根を緑に塗って……オレは騙されたんだよ!」


「そんな昔の話は忘れたなぁ」


 うわあぁ……

 なにがなんでも、ごまかそうとしているね。


「あのさ、その聖獣の名前って分かる?」


「シームルグだ。勇者が産まれる時に現れる鳥だ」


 やっぱり、そうか。

 地上にいる聖獣なんて珍しいからね。


「その羽根ならわたしが持っているよ? 五枚だよね?」


「ええ!? 五枚も持っているのか!? どうして!?」


 魚人族が驚くのも当然だよね。

 ピーちゃんが換羽の時に抜けた羽根がすごく綺麗だからビンに入れてとっておいたんだよね。


「わたしがその勇者の母親になるはずだったというか。ピーちゃ……シームルグはわたしのお兄ちゃんみたいな人なの」


「人? シームルグは鳥じゃないのか?」


「うーん。鳥ではあるけど……まぁ色々あったの。魚人族は元々羽根をもらえる約束だったから五枚あげるね? でも人魚は嘘をついていたから……金貨五十枚分を働いて返してもらおうかな?」


「え? 金貨五十枚分って……そんな。どんな恐ろしい事をさせられるんだ……」


 人魚が怯えているね。

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