ゲイザー族は掃除が得意なんだね
「では、そろそろ帰るか」
ハデスが立ち上がったね。
「うん。そうだね」
今日は天界で夜を過ごす日だからゴンザレスはベリアルと第三地区で一緒に寝るのかな?
(はい。ベリアルは今からワクワクしているようです。オレに絵本を読み聞かせてくれるつもりのようです)
ふふ。
かわいい弟ができたみたいに思っているんだろうね。
(そのようですね。他のゲイザー族も同じベットで眠れたらいいのですが。後でベリアルにお願いしてみます)
他のゲイザー族?
確かゲイザー族は全部で五人なんだよね。
えっと……
他の子達はどんな姿なのかな?
ベリアルは怖がりだからね。
(え? 先程、ぺるみ様とお話した時に全員ハリセンボンの姿になったと……)
あ、皆が一度に話したから良く聞こえなくて。
それなら安心だね。
(ゲイザー族の姿もかわいいと思うのですが……)
わたしは直接ゲイザー族を見た事が無くてよく分からないの。
ベリアルはすごく怖がりだから心配で。
(そうですか。確かに他の種族からは見た目が怖いと言われていますからね。触手の先にある目が怖いらしいのです)
あぁ……
そうなんだね。
でも、掃除の時とかすごく便利そうだよね。
フヨフヨ浮かべるし、高い所の汚れを見つけやすそうだよ。
あれ?
ハリセンボンの姿だけど掃除の時は周りから触手はどう見えているのかな?
ハリセンボンから触手が出ているように見えるとか?
(さあ……どう見えるのでしょうか。自分の姿は自分では見られませんし、仲間がハリセンボンの姿になってからはまだ会っていませんから。そうだ! 仲間は魔王城にいるヴォジャノーイ族に褒められたそうですよ? これからは掃除をしていた時間を別の事に充てられると。しかも『ぺるみ様が救おうとした種族』としてあのヴォジャノーイ族に大切にされているようです)
『あの』ヴォジャノーイ族?
(ヴォジャノーイ族は恐ろしい種族だと有名ですから。本来ならば、恐ろしくて目も合わせられませんよ。ですが、甘い物が好きだと言ったらお菓子をたくさんもらったようです。ぺるみ様のお陰ですよ)
ふふ。
ゴンザレス以外も甘いお菓子が好きなんだね。
あ、そうだ。
明日は早くに第三地区に行ってイチゴジャムのクッキーを作ろうかな。
ベリアルが喜ぶ顔を見たいんだ。
ゴンザレスとゲイザー族の分もたくさん作るからね。
(それは楽しみですね。ぺるみ様は天界に泊まるのですか……天族が嫌いではないのですか? 遥か昔は天族を憎んでいたのですよ?)
あぁ……
うーん。
わたしには嫌いな生き物はいないよ?
人間も魔族も天族も皆好きだから。
(そうですか……この世界の補正力は、もしかしたら長過ぎる時の中でその力を失ったのかもしれませんね)
力を失った?
(この世界の本来の姿は『魔族が人間を虐げる』というものでした。ですが、今では魔族は規律正しく、人間は優しいというよりは……あれですからねぇ。まぁ確かに魔族は人間を食べはしますが、虐げるとまではいきませんから)
……そうなんだよね。
遥か昔は、何度か吉田のおじいちゃんの息子さんが人間を嫌いになるように仕向けたらしいけど、今はそんな感じは全然しないんだ。
わたしは、人間をどんどん好きになっていくし、虐げたいとも思わない。
もしかしたら、本当にこの世界の補正力は消え去った?
それとも、補正力が効かないほどこの世界の生き物が知能を持ったとか?
うーん。
あまりに壮大過ぎてわたしには分からないよ。