また何か起こりそうな予感がするよ
「皆が秘密を話してきましたので……わたしもひとつ話しましょう」
……?
公爵が抱っこしているベリアルを撫でながら話し始めたね。
「わたしは昔、アルストロメリア王国の王子でした。カサブランカはわたしの唯一の友人で……わたしは母ではない王妃に毒を盛られ続けていました」
公爵……
辛いはずなのに、レオンハルトの為に話してくれるんだね。
「カサブランカは、どんな時もわたしを笑顔にしてくれました。わたしは……そんなカサブランカを……愛していたのです。まだあの頃は幼く、その気持ちに気づくまで随分時間がかかってしまいました……」
……!
公爵は今でもおばあ様の事が好きなのかな?
「わたしは……王になった兄から国を追い出された事をずっと恨んで生きてきました。ですが……最近になってカサブランカに真実を教えられたのです。兄はわたしを守る為に……わたしを生かす為に、このリコリス王国に……わたしをいらぬ争いに巻き込まぬ為に……気持ちはいつか伝わるものですよ? そこに愛があるのならば、いつか必ず伝わります。若きプルメリアの殿下、わたしも力になりましょう。恩人のカサブランカに恩返しをしたいのです。カサブランカには何も返せませんでしたが、孫である殿下の力にならなれそうです」
「公爵……ありがとうございます。わたしには、マクスとリュートしかいないと思っていましたが……こんなにも……皆さん、本当にありがとうございます。皆さんの気持ちを裏切らないように頑張ります」
「じゃあ、まずはお兄さんを助け出さないとね。父親である王様に頼んでも無理かな?」
王妃に邪魔されちゃうかな?
「そうだね……父上には決定権は無いはずだよ?」
「なるほど。王妃の父親が決める……か。その王妃の父親ってどんな人間なの?」
「金の亡者だよ。お金の為ならなんでもするんだ」
「ふぅん。扱いやすそうだね」
「え? 狡猾だから扱いにくい人だよ?」
「ふふ。お兄さんを助け出す方法を思いついたよ。それから、妹さんは誰がお世話をしているの?」
「タウンハウスにいる侍女が……でもなぜ?」
「王妃の息のかかる人間は辞めさせよう。向こうに情報を渡さない為にね。皆、辞めさせて侍女の振りをして王妃に手紙を送って偽の情報を流すの。その為には侍女達を監禁しないといけないね」
「でも……そうなると妹の世話をする者がいなくなってしまうから」
「大丈夫だよ。乳母がいればいいんだよね?」
「え? うん」
「市井の市場に昔、貴族の邸宅で働いていた人間が大勢いるの。その人間を雇えばいいんだよ。もし、身分のある人間を雇いたいのならお兄様に頼んでみよう? 喜んで力になってくれるはずだよ」
「もし、この事実を知られたら……兄に危害が及ばないかな?」
「大丈夫。すぐに助けに行くから。助けるのはお兄さんだけでいいのかな?」
「父上は……無理だよね?」
「うん。王様だからね。しばらくは頑張ってもらおう? それに、王だからこそ逃げてはいけないんだよ。国の父が王様で、国の母が王妃なんだから。自らの手で王妃の父親から力を取り戻さないとね」
王の威厳を自ら取り戻させるんだよ。
公爵とカサブランカの幼い頃のお話は
『幼馴染みのガサツな侯爵令嬢は魔物を一撃で倒すほど強いと判明したので怖くて逆らえないし、恋心を抱くなんて絶対にあり得ません』
に書かれています。