プルメリアの王妃がこんなに酷い人間だったなんて
「レオンハルト……プルメリアで酷い目に遭っているの?」
心配になっちゃうよ。
「え? あぁ……大丈夫だよ。母親のいない王子はこんなものだよ。でも……今はわたしよりも妹の方が心配なんだ。王妃が……実子だというのに女は必要なかったと無下に扱ってね。このままだと、命の危険がありそうだから妹も共にリコリス王国に来ているんだ」
「妹? あぁ……そういえばもうすぐ弟か妹が産まれるって言っていたよね。実子なのにどうしてそんな事に? 王様は黙って見ているの?」
「王妃は力を持つ為にもう一人息子を望んでいたんだ。でも、産まれてきたのは娘だった……それを知った王妃は怒り狂って妹に乳母さえ付けなくて。仕方なくわたしの宮に妹を連れてきたんだ」
「そんなの酷いよ! あぁ……ごめん。……レオンハルトは素敵なお兄さんなんだね。責めるような事を言ってごめんなさい」
「いや、本当にその通りだよ。恥ずかしい話だけど……兄は母親を目の前で喪って心を病んでいてね。弟は王妃の実子で大切にされているんだけど……甘やかされて……このまま王になればプルメリアは破滅してしまうはずだよ。妹はいないも同然に扱われているし。わたしも、常に王妃に命を狙われていてね」
「……そうだったんだね。あの……王様はどうして助けてくれないの?」
「あぁ……父上は優し過ぎるんだよ。だから……その……」
「力のある家門の娘を王妃を持つと、そうなる事が多々ある。王妃の父親が政治に介入しているのであろう?」
ハデス……
なるほど、名ばかりの王で実権は王妃の父親にある……か。
「……その通りです。わたしがリコリス王の親類だと分かり、力を持たれては困ると考えたのか有無を言わさずリコリス王国に連れ出されて……父上はただ謝るばかりで……」
「レオンハルト……だったか。お前は流されてばかりの生き方しかできないのか?」
「え? あぁ……あの……」
「力の無い親のせいか? お前は今ここにいるのが誰のせいだと思う?」
「王妃のせいだ……少し前のわたしならそう思っていたはずです。わたしも……兄と同様に目の前で母を喪いました。王妃に毒を盛られたのです。わたしは……母の最期の言葉通りただ生き残る事だけを考えてきました。母は苦しみながらも『生きて』とわたしに言葉を残してくれたのです」
「そうか……」
「ですが……ルゥ……ペリドットとヘリオスの生き方を見て考えが変わったのです。わたしにも……守るべきものがあると気づかされたのです」
「守るべきもの?」
「兄と妹……わたしは二人を守りたいのです」
「兄もリコリス王国に来ているのか?」
「いいえ。心の病だという事を隠す為に閉じ込められているのです。妹もこのままでは辛い思いをさせられるはずです。二人を救う為には……わたしは、わたしにできる事は……」
「やるつもりなのだな」
「はい。王妃を討ち、二人を守ります。そして……わたしが王太子になります」
「ふっ。よく言った。お前なら成し遂げるだろう」
「前王様……わたしは……今初めてこの事を口に出しました。王妃に『お前ごときが』と言われ続けて、わたしには何もできないのだと思い続けてきました。ですが……話して良かったです」
レオンハルトはずっと虐げられていたんだね。