『ずっと遊んで暮らしたいおじいちゃま』と『早く譲位させたいおばあ様』
「まぁまぁ。ふふ。ペリドットちゃんはかわいいわねぇ。この様子だと前王様も大変でしょうが、これからもよろしくお願いします」
おばあ様がハデスに話しかけているね。
幸せそうな笑顔でわたしまで嬉しくなるよ。
「何があろうとペリドットを守り続ける。安心して欲しい」
……!
嬉しいよ。
ありがとう、ハデス。
「ふふ。ペリドットちゃんは幸せね。こんなに愛してもらえるなんて……どこかのバカとは大違いだわ」
おじいちゃまの事か。
自分でも分かったんだね。
ピクッてしたよ。
「うぅ……カサブランカちゃん……ごめんね? 赦してよぉ」
おじいちゃまはダメダメな感じがお父様にそっくりだね。
「今日から、溜まりに溜まった仕事を全て片付けてもらいますからね! しばらくは眠らせませんから、そのつもりで!」
「ええ!? イヤだよぉ。機嫌を直してよぉ。ね?」
「それなら、早く譲位してください! 色々面倒なのですから!」
「カサブランカちゃぁん。怒った顔もかわいいね」
おぉ……
お父様と同じような事を言っているね。
これを言うとお母様もヘラも機嫌が良くなるんだよね。
「はっ! そんな事は知っています! さっさと譲位してください!」
……おばあ様には効かないみたいだね。
「うぅ……レオ助けてよぉ……」
レオンハルトが困った顔をしているね。
小国だけど国王が代わるのは大変な事のはずだからね。
「ココ……お父ちゃまを助けてよぉ」
ココちゃんも困っちゃうよね。
今日初めて会った養父がこれじゃあねぇ。
「ペリドットォ……ぐすん」
わたしの番が来たか……
「おじいちゃま? どうして譲位しないの? 実質、叔父様が王の仕事をしているんだよね? 何か理由があるの?」
さすがに、王様の方がかっこいいからなんて嘘だよね?
「え? だって……王を辞めたら船を使えなくなるし、支給されるお金も減るから……」
え?
そんな理由で?
ゴンザレス、今の本当?
実はもっとまともな理由があったりしないかな?
(うーん。そうですねぇ。嘘は無いようですよ?)
そっか。
ありがとう。
譲位すれば遊んでいても怒られないのに……
(そうですねぇ。でも、確かに支給額は減り、船も使えなくなるようですよ? 聖女様のおばあ様が『ばれていたのね。早く譲位させたいのに』と内心焦っています)
おばあ様……
苦労させられているんだね。
かわいそうに。
「『じいじ』? おばあ様が困っているみたいだし、なんとかならないかな?」
ハデスなら何か良い考えがあるかも。
「……そうだな。おじいさんは何の為に船に乗っていたのだ?」
「それは、姉を捜す為に……でも、どこにいるのか分からなくて。世界の果てに捜し人がいるという言い伝えを信じて……」
「では、姉に会えれば船旅をやめるのか?」
「それは……海の旅が楽しくなって……やめられないかも……しれない」
「やっぱり! そんな事だと思ったわ!」
おばあ様が、すごく怖い顔をして怒り始めたね。
これは簡単には解決しなそうだよ。
『ずっと遊んで暮らしたいおじいちゃま』と『早く譲位させたいおばあ様』か。
どっちの気持ちも分かるけど、おばあ様も叔父様もかなり困っているみたいだし……
どうしたら良いのかな?
今は公爵達もいるから『海賊の島にいるココちゃんのおばあさん』が『捜しているお姉さん』だって話せないし。
うーん。
困ったね。