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相談役ってなんでもできるんだね

「あの……姫様、元騎士の……あのお方は、姫様が市場に……いえ……あの……」


 あぁ……

 さすがは市場の相談役だね。

 分かっていたんだ。

 どうしようかな。

 話した方がいいのかな?

 でも……

 うーん。


「ペリドット様……オレは相談役には話した方が良いと思います」


『爆弾犯のジャック』の『お父さんのジャック』が真剣な顔をしているね。

 ちなみに相談役もジャックなんだよね。

 って、そうじゃなくて。


「うん……実はそうなんだ。お兄様は警備を強化してくれたけど、朝から晩までずっと守ってもらえる訳じゃないし。わたしもあと二ヶ月でアカデミーを辞める事になったから、今みたいに毎日は来られないと思うんだ。だから元騎士のジャックがいてくれれば安心かなって思ったの。息子さんのジャックもかなり強そうなんだよ?」


「姫様……そこまで市場を思ってくださるとは……ありがとうございます」


 相談役が泣きそうになっているね。


「あぁ……泣かないで? この事は皆には秘密にして欲しいの」


「え? なぜですか?」


「うん……まだよく分からないんだけど誰かが『術』みたいなものを使ってわたしを悪者にしようとしているかもしれなくて。その『術』は子供しか、かからないみたいなんだけど……元騎士のジャックがわたしに雇われているって知られたら巻き込んじゃう可能性があるの。だから、この事は市場の皆にも秘密にして欲しいの」


「その『術』とやらは、危なくはないのですか?」


「わたしにもよく分からないの。洗脳っていうのかな。そんな感じみたい」


「洗脳……なんと恐ろしい。なぜ姫様を悪者にしようとするのでしょうか」


「うん……わたしが……悪い生き物……だからかな?」


「そんな! 絶対にそのような事はあり得ません!」


「相談役……ありがとう。嬉しいよ」


「幼いジャックも……洗脳されてしまうのでしょうか」


「うん……よく分からないの。無垢な幼い子供は洗脳されやすくて、大人は自分の意志がしっかりしているから洗脳されにくいらしいんだけど」


「なるほど。では、我ら大人は平気なわけですね。(姫様を守れる機会を与えられるとは。これで恩を返せるぞ)姫様を貶めるとは……絶対に赦せん!」


「相談役……興奮すると身体に悪いからね。落ち着いて?」


「あ……では、アカデミーを辞めるという事は……全て解決したのですね」


「うん。令嬢誘拐の犯人が捕まったの。でも学長と『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』に参加する約束をしてあったから、それまでの二ヶ月はアカデミーに通う事になったんだよ?」


「そうでしたか。『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』ですか。最近はリコリスアカデミーは優勝できていませんでしたが……先々代の陛下はアカデミーにかなり力を入れておられましたが、先代はそうではありませんでした。きっと、先々代の陛下はお喜びの事でしょう。姫様も陛下も、このように素晴らしくお育ちになられて……うぅ……」


「あぁ……相談役……泣かないで? あ、そうだ。訊きたい事があったんだ。先々代の王は市井の人間にレースを作らせていたんだよね? 何に使っていたのかな? かなり高額で買い取っていたらしいけど」


「え? よくご存知で……なんでも、人形に着せる服を作るからそのつもりで編み目を作るようにと……」


「人形に?」


「はい。確か……他国の貴族の間で人形に高価な服を着させる事が流行っていると聞いたような」


「へぇ……貴族の好きそうな話だね」


「はい。懐かしいですねぇ。ずいぶん昔の話です」


「……もし……もしもだよ? わたしがヒヨコちゃんの人形を作ったとして、それに着せるドレス用のレースを編んでもらう事もできるのかな?」


「なんと! ヒヨコ様の人形のドレスを!? もちろんです!」


「あ……でも、傘とかボンネット用のレースも作らないといけないんだよね? もし良かったら市場の誰かにレースの編み方を教えてもらえないかな?」


「それでしたら、わたしが。こう見えて『レース編みのジャック』と呼ばれていたのですよ?」


 相談役はなんでもできるんだね。

 さすが、市場のまとめ役だよ。


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