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やっぱり人間を嫌いになんてなれないよ

「ジャックのお父さん、お待たせ」


 ヘスティアとベリス王は第三地区に帰ったし……

 お父さんは泣き止んだかな?

 部屋に入りにくいけどリコリス城に行くのなら急がないとね。


「あぁ……はい。恥ずかしいです。この年になってこんなに泣くなんて」


「そんな事は無いよ。わたしもよく泣いているよ?」


「そうでしたか……辛い事があるんですね。おかわいそうに……グスン」


 おぉ……

 泣き上戸なのかな?


「泣かないで? わたしは大丈夫だから。えっと……はい。服と剣だよ。一人で着られないよね。お手伝いするね?」


「え? そんな……ペリドット様にそんな事はさせられませんよ。それに……オレは汚れているし」


「あぁ……じゃあ、浄化しようか。ついでに部屋も……と。これでどうかな?」


「……!? え? 身体が綺麗になった!? 部屋の匂いまで……どうして……」


「あぁ……うーん。えーと……何て言うか……」


「まさか……本当に聖女様!? でも、聖女様はもう亡くなられたはずだし……」


「もうジャックは知っているから話すけど……わたしは聖女ルゥだったの。神様が『ペリドット』の身体を授けてくださったんだよ? 信じてもらえないかもしれないけど」


「……信じます。腐った足が治った時からそうじゃないかと……」


「……もうひとつ話さないといけない事があるの。とある……人……が人間にわたしを悪く思わせようとしているっていうか……だからジャックとお父さんがわたしに雇われている事を市井の皆には内緒にして欲しいの」


 わたしへの悪意に巻き込ませるわけにはいかないからね。


「そんな……誰がそんな酷い事を!」


「うーん。姿が見えない相手……かな? わたしにもよく分からないの。小さい子を洗脳っていうか……上手く言えないんだけど……」


「洗脳? そんな事が……」


「うん。とりあえず、ジャックとお父さんはわたしが雇い主だって事を秘密にして市場に入り込んでくれるかな? 市場の相談役に働きたいって話せば場所を確保できるはずだよ?」


「その……ペリドット様を陥れようとする悪者をオレが倒す事はできませんか?」


「え? あぁ……ありがとう。でも、姿が見えないし……わたしにもよく分からないの。とりあえず今は相手の出方を見たいんだ」


「……なんとも歯がゆいですが……オレにできる事があればなんでも言ってください」


「……うん。ありがとう。心強いよ」


 人間はこんなにも温かい心を持っているんだ。

 嫌いになんてなれるはずがないよ。

 この世界の補正力か……

 もし、わたしが死んだらどうなるんだろう?

 この世界はわたしが人間を虐げる為に創り出されたんだよね?

 わたしの魂が完全に消えたらこの世界も消える……とかは無いよね?

 そうなったら第三地区の皆も人間も魔族も一緒に消えちゃうのかな?

 そんなの嫌だよ。

 わたしは天族だから普通に死んだら冥界に行くんだよね。

 でも、自殺したら完全に消滅する。

 絶対に自殺だけはダメだね。

 もし、わたしが死んだらこの世界も一緒に消えるのなら……

 わたし一人の問題じゃないんだ。

 第三地区に帰ったら吉田のおじいちゃんに色々訊いてみよう。

 

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