この世界の補正の力ってどれくらいのものなのかな?
さてと……
ベリス王は水晶で見ているかな?
ジャックのお父さんはベットで泣いているから少し一人にしてあげよう。
「ベリス王、いるかな? ジャックのお父さんの服とか靴を準備してもらえるかな?」
うーん。
第三地区からは見聞きできるけど、こっちからは第三地区の状況が分からないんだよね。
(ぺるみ様、オレの声が聞こえますか?)
あ、ゴンザレス?
(はい。ずっと上位精霊に邪魔されていました。やっと声が聞こえるようになったようですね)
うん。
ずっと近くにいてくれたんだね。
ありがとう。
浮かんでいるのは疲れない?
肩においで。
(ぺるみ様の力になる為にオレはここにいるんです。今すぐお役に立ちますからね。うーん。はい。ベリス王はええと……ヘスティア様に空間移動していただき国に帰りましたね。人間用の服や剣を持ちに行ったようですよ? あとでハデス様にたっぷり金貨を請求しようとしていますね)
……本当にベリス王は商売上手だね。
(ハデス様なら、ぺるみ様の為ならいくらでも支払いますからね)
あぁ……
そうだね。
そうならないように新しい商売の提案でもしようかな?
ハデスに迷惑をかけられないしね。
(新しい商売ですか?)
うん。
何がいいかなぁ。
うーん……
(何か甘いお菓子がいいですね)
ふふ。
ゴンザレスはお菓子が好きなんだね。
(はい。こちらに来てからおいしいお菓子が食べられるようになって幸せです)
そっか。
じゃあ、何か甘いお菓子のレシピをベリス王に教えようかな?
(はいっ! あぁ……楽しみです)
そういえば、ヘスティアはベリス王によく空間移動をしているみたいだね。
(そのようですね。気が合うようですからね)
気が合う?
ヘスティアとベリス王が?
(ヘスティア様もベリス王も作り笑顔と言いますか……アレですからね)
あぁ……
確かにずっと笑顔だけど怖い事を考えている時があるよね。
(お互いに一目会った時に感じるものがあったようですよ?)
え?
それって……好き……とか?
(え? あはは! それは違います。お互いに利益があるから助け合っているようですよ?)
お互いに利益が?
(はい。ヘスティア様は『天界では入手困難なドレスや宝石』を、ベリス王は『空間移動』を……そんな感じですね)
ふぅん。
なるほどね。
(ところで……ぺるみ様はこの世界の理の補正力が気になっておられるようですね)
え?
うん。
そうなんだよ。
ゴンザレスは何か知っているのかな?
(詳しくは分かりませんが。確かに遥か昔、何度かおかしな事がありましたね)
おかしな事?
それって何かな?
(はい。初代の神の息子が人間を憎むように仕組まれた……と言いますか。遥か昔に何度か人間が記憶操作されたようでした)
記憶操作?
吉田のおじいちゃんがしたの?
(いいえ。誰かは分かりません。ですが初代の神でない事は確かです)
どうしてそう思うの?
(その頃の初代の神は息子を愛するようになっていましたから、そんな酷い事をする必要が無かったんですよ)
酷い事?
(はい。一部の人間が初代の神の息子を意味も無く憎むようになったんです)
一部の人間が?
(はい。大人以外と言った方が分かりやすいでしょうか)
人間の子供達が吉田のおじいちゃんの息子さんを憎んでいたの?
(うーん。説明が難しいんです。なんと言うか……子供の中にも嫌う者とそうならない者がいて。そうですねぇ。記憶操作される人間が少しだけいる……そんな感じでしょうか?)
自分の意思をしっかり持っている人間は記憶操作されなかったって事かな?
(なんとも言えませんが……初代の神の記憶操作は完璧です。ですが、この世界の記憶操作はそれほどではない。そんな感じでしょうか?)
この世界の補正力はそれほど強くはないって事なのかな?
確かにこの世界の『決まり』の『理』だけど……
そこに暮らす人間や魔族を意のままに操る事は難しいとか?
だから、幼い子供しか記憶操作ができないのかな。
(どうでしょうか。オレには分かりません)
うーん。
この世界から見たら、お腹の中にいた人間と魔族がお腹から出たら自らの意思を持って言う事を聞かなくなった……とかかな?
世界の理や補正力が効かないくらいに人間と魔族が強い意志を持ったから、とめられなくなった?
補正力が補正しようとしても、その力は子供にしか効かないし、その子供も判断力が身に付けば記憶操作から解放されているのかも。
これは、帰ったら吉田のおじいちゃんに訊いてみた方が良さそうだね。