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今じゃない遠い未来に

「分かるよ? 世の中はそんなに甘くない。綺麗事だけじゃ生きていけないんだよ。でもね? リコリス王国は変わろうとしているの。リコリス王は虐げられてきたリコリスの民を笑顔にしたいと思っているんだよ?」


 お兄様の思いを分かって欲しいな。


「陛下が……確かに……それは分かります。家や市場を与えてくださいました。でも、現実は……何も変わりません。相変わらず平民は貴族に虐げられているんです」


 ジャックのお父さんの言う通りだね。

 でも……


「『時代が変わる時』が今なんだよ」


「え?」


「今、生きている皆が頑張ると……この後産まれてくるジャックの子供やその子供が幸せになれるんだよ」


「ジャックの子供……?」


「今すぐには変わらないかもしれない。身分制度はそんなに簡単に変えられないからね。でも、これから先はどうだろう。あなたの孫やひ孫は貴族に虐げられない暮らしができるかもしれないよ?」


「孫やひ孫……?」


「身分制度が無くなったとしても、ずっと続いてきた身分の差は人間に根深く残るはずだよ? 簡単には消えないの」


「ペリドット様は、この忌まわしい身分制度が無くなると言うんですか?」


「今じゃない未来に……きっと無くなるよ。でもね、それですぐに幸せになれるかって言ったら……それは違うんだよ。今だってそうだから。魔素が無くなってからまた新たな問題が出てきたの。何かひとつ解決すると他の問題が出てくるんだよね。今まで見えなかった問題が見えてくるの」


「新しい世界になる為には、色々な問題を解決しないといけないという事ですか……ジャックの子供や孫……か。今、オレ達が頑張って問題を解決すれば次の世代が幸せに暮らせるのか」


「かなり遠い未来になるだろうけど……あなたはその未来にはもういないだろうけど……それでも……やる?」


「考えるまでもありませんよ。もちろん、やります。それでこれから先に産まれてくる子供達が幸せに暮らせるなら……貴族に虐げられずに済むのなら」


「あなたは、平民出身の騎士だったから辛い思いをしてきたんだね」


「……人ではない扱いを受けてきました。だから騎士になりたいと言ったジャックに……騎士にだけはなるなと……」


「そうだったんだね。それでジャックはジギタリス公爵に雇われたんだね」


「雇われた……そうですね。でも、人らしい扱いは受けなかったはずです。騎士になりたくて毎日剣を振っていたのに……あの純粋なジャックは利用され続けてきました。全てはオレのせいだ。オレが貴族だったら……ジャックは……」


「それをジャックの前で話したの?」


「え? あの……はい」


「そっか……」


「ペリドット様?」


「息子思いの父親と、父親思いの息子……か」


「え?」


「二度と……誰かが『貴族に産まれさえすれば』って言わずに済む世界を作りたい……でも……これだけは覚えておいて? 貴族だろうが平民だろうが関係ないんだよ。誰でも自分の子供がかわいいの。孫がかわいいんだよ。それと同じでジャックもあなたを大切に想っているんだよ? 貴族じゃなくても、なりたかった騎士になれなくても……父親であるあなたが好きなの。これからジャックは騎士じゃないけど……市場の皆を守る『守り神』になるんだよ」


 騎士っていう地位じゃないけど、誰かを守れる立派な役割だよ?

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