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あなたなら、きっとやり直せるよ

「聖女様の事だろう? 世界を浄化して亡くなったんだ」


 この人間はルゥをどう思っているのかな?

 少し怖いけど訊いてみよう。


「……バカな女だと思うよね。世界を守って自分は死んじゃうんだから……」


「なんて罰当たりな事を! 聖女様は素晴らしいお方だ! 他人の為に命がけで世界を守ってくれたんだ!」


「……ありがとう。あなたは優しいね。嬉しいよ」


「は? なんで、あんたが礼を言うんだよ」


「わたしがその聖女だからだよ?」


「は? 何を……」


「神様がね? わたしにこの身体を授けてくださったの。よく頑張ったって言ってね」


「神……様? 会ったのか? まさか……そんな……」


「ぼんやりとしか覚えていないんだけど……会ったよ」


「神様が……じゃあ、本当に聖女様?」


「うん。今はペリドットとして暮らしているの。あなたは……お父さんの為にジギタリス公爵家で働いていたんだね。さっきあなたは言ったよね。『聖女様は素晴らしいお方だ。他人の為に命がけで世界を守ってくれたんだ』って。わたしから見ればあなたも同じだよ? お父さんの為に毎日公爵に虐げられながら頑張っていたんだよね」


「聖女様……」


「偉いね。よく頑張ったね。これからはもう大丈夫だよ。皆で一緒に穏やかに幸せに暮らそう? 一人で全てを抱え込む必要はないんだよ? 市場の皆は助け合いながら暮らしているの。あなたがお父さんと市場に来てくれたら皆も喜ぶと思うの。どうかな?」


「それじゃあ、聖女様は得をしないんじゃない……ですか?」


「ふふ。敬語なんて使わなくていいんだよ? 露店商市場はお兄様が一番力を入れた政策なの。正直、貴族は市場に良い感情を持っていないんだ。わたしは、もう王妹じゃないから影から見守る事しかできないの。それが歯がゆくて。だから、こっそり市場のお手伝いをしているの。あなたがお父さんを大好きなように、わたしもお兄様が大好きなんだよ?」


「聖女様……」


「誰かの為に犠牲になるんじゃなくて、誰かと一緒に幸せを作っていけたら……すごくすごーく楽しいと思わない?」


「……それは……はい。確かに……そうですけど……」


「市場を守ってもらえないかな? お兄様が貴族の騎士に巡回を頼んでくれたの。それに、貴族が揉め事を起こしたらすぐに騎士が駆けつけてくれる事にもなっているんだよ?」


「じゃあ……オレは必要ないんじゃ?」


「ふふ。守り神だよ」


「守り神? 神様?」


「あなたとお父さんが市場の守り神になるの」


「……? え? オレも父ちゃんも人だけど……」


「ふふ。市場の人間が安心して暮らせるように見守ってくれる神様みたいな人間……て事だよ?」


「オレと父ちゃんが……」


「市場にはもう一人神様がいるんだよ?」


「え?」


「相談役をしているおじいさんがいてね? 皆を支えているの。すごく素敵なんだよ?」


「なるほど……聖女様はその相談役の負担を減らしてあげたいと思ってるんですね?」


「ふふ。あなたは頭が良いね」


「え? そんな事……初めて言われた……」


「どうかな? わたしに雇われてみない?」


 この優しい人間ならきっとやり直せるはずだよ。


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