孫娘を溺愛するおじいちゃま
「うう……残念だったな。オレは爆発する呪文を唱えた。もうすぐ爆発するぞ? お前達は、早くここから逃げないと大変な事になるぞ。ふははは」
爆弾を仕掛けた男はあの意味不明な詠唱を爆発する呪文だと思っていたんだね。
自分も爆発に巻き込まれるとは思わなかったのかな?
ん?
『お前達は』って言った?
「何!? 大変だ! 直ちに避難しましょう!」
騎士団員達が慌て始めたね。
「ペリドットはおじいちゃまが抱っこして連れて行ってあげるから! ほら、おいで!」
え?
わたしを赤ちゃんだと思っているのかな?
おじいちゃまには無理だよ。
「おじいちゃま……わたし、重いから。それに自分で歩けるし……」
あ、どさくさに紛れてハデスが爆弾を仕掛けた男の記憶を消しているね。
これでシェイドの黒歴史の本の内容をばらされずに済むね。
あとは、ジギタリス公爵達の記憶を消すだけだね。
他にもまだあの本の内容を知っている人間がいるのかな?
うーん。
「大丈夫だ! ほら、抱っこおいで!」
抱っこおいでって……
腰の骨が折れでもしたら……
元気そうだけど高齢だし。
「うわあぁ! おじいちゃま!?」
無理矢理抱っこしてきたね。
プルプル震えているよ?
大丈夫なのかな?
「えっと……おじいちゃま……大丈夫?」
明らかに顔色が悪いよ。
「だ……だ……大丈夫。ははは。さぁ出口は……どっちだ……」
「おじいちゃま……わたし……歩けるから。下ろして? ね?」
「かわいい孫娘一人も抱っこできないおじいちゃまなんて……そんなのはダメだあああ!」
おぉ……
最後の力を振り絞っているね。
本当に最期になったりして……
仕方ないな。
治癒の力を使って、あとは……風の上位精霊のジンにお願いがあるの。
(なんだ? 皆で空でも飛ぶか? おもしろそうだぞ)
あぁ……
確かに楽しそうだけど、おじいちゃまがかわいそうだから、風の力でわたしを軽くできるかな?
外まで運ばせてあげたいの。
(そうか。ぺるみは優しいな。では、やろう)
おお!
自分でも身体が軽くなっているのが分かるね。
「ん? ペリドット……? うわあぁ!」
突然軽くなったから、さすがにおかしいと思うよね。
しかも、重くて踏ん張っていた力が緩んで前に倒れ込みそうになったね。
ジンが風の力で助けてくれたから転ばずに済んだけど……
明らかに魔力を使っているのがバレバレだよね。
おじいちゃまはわたしが魔力(本当は神力だけど)を持っているのを知っているのかな?
この感じだと知らなそうだけど……
「お……おじいちゃまは力持ちなんだね。すごいよ。かっこいいね」
わざとらしかったかな?
「ははは! そうか。まだまだ若い者には負けんぞ! 外まで走るからな。しっかり掴まっていろ?」
「ペル……ペリドット。我らは一旦ニホンに帰るからな。あとは、任せたぞ」
ハデスとヴォジャノーイ族のおじちゃんが外とは反対方向に歩いて行ったね。
アカデミーにある古い書物を第三地区に運んでくれるつもりなんだね。
「うん。ありがとう。こっちは任せて」
おじいちゃまが外まで抱っこで運んでくれると、騎士団長が心配そうに駆け寄ってくる。
「ペリドット様……まさかお怪我を? あぁ……大変だ」
「怪我はしていないよ。おじいちゃまが心配して抱っこで運んでくれたの。……お兄様は? まさか来ていないよね?」
「陛下は……どうしてもペリドット様を助けたいと我らと共に来ようとしたのですが、ヒヨコ様に止められました。『ぺるみは兄ちゃんがアカデミーに来たら悲しむはずだ』と。それから『ぺるみを信じてやって欲しい。普段は変態だけど、やる時はやる奴だから信じて待ってろ』と……ヒヨコ様はペリドット様を信頼しておられるのですね」
……普段は変態?
なかなかの悪口だね。
やっぱりベリアルはわたしを変態だと思っていたんだね。