おじいちゃまは精霊に好かれる優しい人間だった
「ペリドットオオ! どこだあああ!」
だんだん声が近づいて来ているね。
えっと……
『おじいちゃま』って呼んだ方がいいのかな?
「なんだ? 誰か来たのか? 上手い具合に皆いなくなったと思ったのに」
爆弾を仕掛けている人間が剣を抜いたね。
まさか、おじいちゃまをやるつもりじゃないよね?
ん?
この構えは……かなり強そうだね。
「ペリドットオオ!」
あ、姿が見えたね。
わたし達の後ろからすごい勢いで走って来ているよ。
「……仕方ないね。お……おじいちゃま! わたしはここだよ! 剣を抜いた男がいるよ! 気をつけて!」
聞こえたかな?
「なぁにぃ!? ペリドットに剣を抜いただとおぉ!? 赦さんっ! あ! お前だな!?」
え?
わたし達を通り過ぎて爆弾を仕掛けた男に飛び蹴りした!?
高齢なのにすごいよ!
おぉ……
しっかり押さえ込んでいるね。
「お……おじい……ちゃま?」
おじいちゃまって呼んで欲しそうだから……
おじいちゃまでいいんだよね?
「ペリドットオオ……おぉ……ペリドットオオ……」
これが……
ルゥのおじい様か……
真っ黒に日焼けしているね。
鼻を垂らしながら泣いているよ。
孫に甘いおじいさんなのが一目で分かるね。
「ペリドットちゃん! ここにいたのね? 怪我はない?」
「おばあ様!? どうしてここに? アカデミーは危ないのに。アルストロメリア公爵も……」
「ペリドット様がアカデミーで爆弾を処理しようとしていると聞いて……ハァハァ……そうしたら……ハァハァ……とりあえず……騎士団よ、この爆弾を仕掛けた男を捕らえよ!」
なるほど……
それを聞いたおじいちゃまがアカデミーに無理矢理入り込んじゃったのか。
とめようとしておばあ様と公爵も入って来たんだね。
「ペリドット……あぁ……ペリドット……おじいちゃまだよ? あぁ……まるで女神様のように美しいなぁ。もう怖くないぞ? おじいちゃまが助けに来たからな。よちよち。良い子でちゅねぇ」
『よちよち良い子でちゅね』って……
スウィートちゃんのおじいさんみたいだね。
おじいちゃまが泣きながら抱きしめてくれたけど……
わたしは……ルゥは、おじいちゃまの孫じゃないんだよね。
ルゥはおじいちゃまの『姉の孫』なんだよ。
でもこの事はシャムロックの皆は知らないんだよね。
複雑だけど仕方ないね。
「おじいちゃま……危ないのにどうして? 爆弾があるんだよ?」
「かわいいペリドットの為なら怖い事なんてないさ! それが家族だろう?」
あぁ……
おじいちゃまは聞いていた通りの人間だね。
若い頃には姉を助ける為に大砲を積んだ船で大国に乗り込んだくらいだからね。
家族の為なら自分の命は惜しくないって事か……
どこまでもまっすぐな人間だね。
でも……
危険だね。
無謀すぎるよ。
今まで生きて来られたのは……肩にいる精霊のお陰かな?
本人には見えていないみたいだけどね。
「……おじいちゃま、助けに来てくれてありがとう。怪我しなかった?」
「……! あぁ……おじいちゃまの孫は優しくて美しくて最高だ! スーハー……」
おぉ……
がっつり吸ってくるね。
ニヤニヤが止まらないみたいだね。
ハデスは……
嫉妬していないみたいだね。
良かった。
「もう! ペリドットちゃんが困っているでしょう? ごめんなさいね。ほら、離れて」
おばあ様が引き離そうとするけど、しっかりくっついて離れないね。
「イヤだイヤだ! 離れないもん!」
『離れないもん』って子供じゃないんだから……
あぁ、そういえばおばあ様が『永遠の少年』みたいな事を言っていたよね。
こういう事か……
だから、騙されて偽の神聖物を大量に買わさ……寄附させられたのか。
あぁ……
一発殴られたのかな?
頬が腫れているね。
犯人はおばあ様……だよね。
さすがクマポイを一撃で倒しただけの事はあるよ。