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この世界の補正の力(3)

「簡単な事ではないだろう。理を塗り替える事が可能なのかも分からない」


 ハデスの言う通りだね。

 

「うん。でも、このまま逃げ続けたらこの問題は永遠に続いていくの。だから……やらないといけないの。悪にも色々あるよ? 人間からしたら魔族は悪だよね? でも、魔族からしたら人間の方が悪なんだよ。見る立場によって悪の定義は変わる。この世界の『悪』は魔族である吉田のおじいちゃんの息子さんが人間を虐げる事だよね。でもわたしはそんな事をしたくないの。息子さんも天族を嫌っていただけで人間を虐げたい感情は無いはずだよ? 娘さんやその子孫を愛していたって聞いたの」

 

「ペルセポネ……この問題は全種族王と第三地区の者、天族の家族とも話し合う必要がある。この世界の理を変えると……世界の均衡が崩れる可能性がある。慎重に進めねばならない。それに、理を変える方法があるのかすら分からない。ヨシダのおじいさんにその方法が分かっているのならば遥か昔にその理は変えられていたはずだ。あまり……期待しない方が良い」


「……うん。焦ったらダメだよね。ごめん。自分の事だけでいっぱいいっぱいになっちゃった。ハデスに聞いてもらえて良かったよ。わたし一人だったら間違った方向に行っちゃうところだったよ。ありがとう。いつもわたしを大切にしてくれて、間違えたら引き止めてくれて……本当にありがとう」


「ペルセポネ、わたしはペルセポネの幸せそうに笑う姿が好きだ。ずっとそうあって欲しい。だが……このままだと、世界の理に補正せれてしまうのか。考えよう。皆で知恵を出し合えばなんとかなるかもしれない」


「……うん。これは『吉田のおじいちゃんの息子さんの邪悪な心』だけの問題じゃないんだよね。この世界の理を変えないと同じ事の繰り返しになっちゃうんだ。あまりに壮大すぎてどこから手をつけたらいいか分からないけど……できる事から少しずつ前に進もうと思うよ?」


「そうだな。まずは何からするつもりだ?」


「それは決めてあるの。さっきね? 銀の髪に青い瞳の小さい女の子が脳裏に浮かんだの。あれはたぶん……吉田のおじいちゃんの息子さんの子孫だと思うんだ。確認したいの。二代前の聖女の容姿を……」


「二代前の聖女?」


「うん。もしかしたら……吉田のおじいちゃんの息子さんが、その子を助けて欲しいって願って、わたしにその姿を見せたのかもしれないと思ったの」


「……帰ったら二代前の聖女の話を聞かせてもらおう。そうと決まれば、このアカデミーにある書物を全て第三地区に運ぼう。ヨシダのおじいさんに訊けば分かる事かもしれないが、人間の視点で書かれた物も知る必要がある」


「ありがとう。ハデスがいてくれると心強いよ。またわたしが間違った方向に進みそうになったら教えて欲しいの。いいかな?」


「もちろんだ。今度こそ……ペルセポネと幸せに暮らすのだ。誰にも邪魔はさせない。例え相手が実態の無い『この世界』だとしても……だ」


 ハデス……

 本当にありがとう。

 わたしも今度こそハデスと幸せに暮らしたいよ?

 だからこそ頑張らないと。

 絶対に補正の力になんて負けないんだから。

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