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見ちゃダメって言われると見たくなっちゃうよね

「ふふふ。ふははは! これで、描かれた通りに魔法石を置けたぞ!」


 おぉ……

 悪者っぽく笑っているね。

 ……!

 後ろ姿は学生に見えたけど正面から見たらそうでもないね。

 三十代って感じかな?

 疲れきった顔をしているね。

 うーん。

 この人間も自分が学生に見えていると思っているのかな?

 

「公爵様は王室騎士団に捕まってしまったが、この書物さえあればもう生活には困らないぞ! ふははは! どさくさに紛れて盗み出せて良かったな。これで父ちゃんが……」


 なるほど。

 シェイドの恥ずかしい本はこの人間が持っているんだね。

 他の人間の手に渡る前に燃やしちゃおう。


(……ぺるみ、今すぐやって……今すぐ)


 シェイド……

 辛かったね。

 分かったよ。

 火の上位精霊、お願い。

 わたしの力を変換して?


(任せろ。書の内容を知りたい気もするが……シェイドが恥ずかしさのあまり暴走したら大変だからな……大変だ……あぁ……大変だ……内容を知りたいのだが……)


 確かに、中身は見たいけどシェイドがかわいそうだからね。


(((……)))


 あ……

 上位精霊の皆が本の中身を見たそうにしているね。

 ……わたしも本当は見たいよ?

 だけど、シェイドがかわいそうだから……

 わたしだって高崎駅前のデパートでの黒歴史は消し去りたいし。

 我慢我慢。


(少しだけ……とか……ペラペラっとめくるだけとかは……ダメか?)

(ああ、書物が風でめくれる事は自然にある事だし)

(故意ではなく……自然になら仕方ないわよね?)

(自然か……そうだ。故意ではないなら仕方ない。風のいたずら……とでも言うか……)

(皆! やめないか! シェイドが恥ずかしさのあまり震えているのが見えないのか!)

(お前……そう言いながらあの人間の袋から風の力で書物を取り出そうとしているではないか!)


 あぁ……

 皆、見る気満々だね。

 シェイドが泣きそうな顔をしているよ。

 皆……やめよう?

 シェイドの悲しむ顔は見たくないよ。

 見る前に燃やそうよ。

 皆だって秘密にしたい事があるでしょう?


(うぅ……それはそうだが……)

(すまない。シェイド……赦してくれ。もうこんな事は、やめよう)

(そうだな。ああっ! 『書物を袋から取り出した風の力』が滑ったああぁ!)

 

 ……え?

 ジン?

 何が滑ったって?

 わざとらしい棒読みだったよ?


 ……!

 わたしの足元にシェイドの恥ずかしい本が滑ってきた!?

 しかも、ページが開いたままで中身が見えるよ!?

 あぁ……

 見ちゃダメ……

 ダメなのに……

 うぅ……

 欲に勝てない……

 ……はっ!


 おぉ!

 かっこいい魔法陣が描いてあるね。

 あとは読めない文字がびっしり書いてあるよ?

 

(うわあぁ! 見ちゃダメェェ!)


 シェイド……

 闇の力で本を塵にしたね。

 そんなに嫌だったんだ。

 

 シェイド!

 すごくかっこいい本だったよ?

 塵にしちゃってもったいなかったよ。


(かっこ……良かった? 本当?)

 

 うん!

 シェイドは頭も良いし、かっこいい魔法陣も描けるしすごいよ!


(……! そんな事……言われた事ない)


 そうなの?

 わたしはずっとそう思っていたけど?


(……また描いたら……見てくれる?)


 うわあぁ!

 うん!

 もちろんだよ。

 楽しみにしているね。


(……うん。だから……ぺるみ……好き)


 えへへ。

 わたしもシェイドが大好きだよ?

 あ、もちろん上位精霊の皆も大好きだよ。

 皆と一緒にいると楽しいの。

 世界の理なんて関係ないよ。

 だってわたしは皆が大好きなんだから。

 

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