表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

384/1484

幸せな場所は大好きな人達のいる場所って事だよね

(乗っ取られるのならもっと早くにそうなったはずだ。初代の神もそうならぬように近くで見守ってきたのだろう。ぺるみの不安な気持ちも分かるが……気にする事も無いだろう)


 ネーレウスの言う通りだね。

 もしもこの世界がわたしを悪者だと証明する為に、補正しようとするなら……

 ふふ。

 悪者か……

 そんなに嫌な気持ちにはならないね。

 かっこいい悪者なら魔族の皆が喜びそうだよ。


(ぺるみらしい考えだな。確かにハーピーの息子ならば大喜びだろう。あれは最近には珍しく魔族らしい考えの持ち主だからな)


 考えたって仕方ないよね。

 そうなる時はなるんだし、ならない時はならないんだし。

 楽観的に聞こえるかもしれないけど、少し違うの。

 上手く言えないけど……

 わたし……吉田のおじいちゃんの息子さんに心を完全に奪われないような気がするの。

 息子さんを閉じ込めている心の蓋が開いたとしても一緒に生きていけそうに思えるんだ。

 ペルセポネと月海るみとルゥの心がひとつになれたみたいに、きっと息子さんの心とも上手くやっていけると思うの。


(ははは! 確かにそうだな。だが……これだけは分かっておいて欲しい。我ら上位精霊は、ぺるみを愛している。そして『あの子』の事もだ)


『吉田のおじいちゃんの息子さんの悪い心』だった、わたしの魂は根っからの悪者じゃなかったんだね。


(なぜそう思う?)


 上位精霊の皆が見捨てていないからだよ。


(……ぺるみ、そうだな。我らはずっと『あの子』を見てきたからな。『あの子』の心が少しずつ壊れていく姿を見ている事しかできなかった。あの時こうしていれば、ああしていればと……ずっと悔やんでいた)


 少しずつ壊れていった?


(『あの子』は己を魔族と思い生きてきた。だが『あの子』の娘は、美しい人間の姿だった。他の魔族と人間との子は皆、魔族の姿だった……人間のように見える者でも魔族の角等は消えなかったのだ。あの頃は子孫繁栄の実が無かったからな。母親の種族が産まれてくる今とは違ったのだ。イフリート族のような人間に近い姿の魔族は初めは存在しなかった。あれらは、人間の娘との間の子の子孫だな……)


 ……それで自分が天界から捨てられた天族だと知ったの?


(色々な事が少しずつ積み重なり……真実を知った『あの子』は優し心と悪い心が完全に分離してしまったように見えた。『あの子』は、かわいそうな子なのだ。捨てられる事が無く、天界で暮らしていれば……きっと誰よりも優しい立派な天族として……いや、違うかもしれないな。天族は、魔族のような姿の『あの子』を認めはしなかっただろう。結局……あの子に温かい居場所は無かったのか?)


 温かい居場所……か。

 誰からも虐げられない、穏やかな居場所。

 ……胸が苦しい。

 違う……心が苦しいんだ。

 吉田のおじいちゃんの息子さんの魂が苦しんでいるのかな?

 でも……

 なんだろう?

 自分の事じゃないみたいな感じがするよ。


「ペルセポネ……? ぼーっとして……疲れたか?」


 手を繋いで歩いていたハデスが心配そうに覗き込んできたね。

 上位精霊との会話はハデス達には聞こえていないから疲れたように見えちゃったのかな?


「ううん。大丈夫。この二日間……いろんな事が一度に起こって確かに驚いたけど、大切な事を知れて良かったと思うんだ。ハデス、おじちゃん達も……いつもありがとう。わたし……やっぱり皆の事が大好きだよ」

 

 ハデスもおじちゃん達も微笑みながらわたしの話をきいてくれているね。

 誰からも虐げられない温かい居場所……か。

 わたしにとっての『温かい居場所』は『大切な人達のいる場所』なんだ。

 じゃあ、吉田のおじいちゃんの息子さんの温かい居場所は……?

 娘さん達と暮らしていた家……とか?

 また、胸がギュッとなったね。

 やっぱりわたしの魂は吉田のおじいちゃんの息子さんなんだね。

 でも……

 なんだろう?

 なんでこんなにモヤモヤするんだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ