この世界の補正力には逆らえないのかな?
(だが……時が経つにつれ魔族と人間は『食う者、食われる者』と明確に線引きされていった。これは……初代の神がこの世界を創った時からの理だった。いくら上位精霊といえども、その理をねじ曲げ続ける事はできなかったのだ)
理……か。
話してくれるネーレウスも、上位精霊達も辛そうな顔をしているね。
(我らがぺるみをかわいくて仕方がないのは……『あの子』だったからなのか……もちろん『ルゥ』を好きだった……だがルゥの中に『あの子』を感じていたのかもしれないな)
……?
心が……モヤモヤする?
(魔族は『あの子』と共に暮らす者。人間は『あの子』に虐げられる者。精霊は『あの子』を殺す者。初代の神はこの世界を創った時には……まだ息子を愛せなかった。息子が『悪』だと思いたかった。分かるか? 思いたかったのだ。完全に悪だと思ってはいなかった。初代の神の心は……ずっと苦しんでいた。醜く産まれた息子を受け入れられず……だが愛そうとする心もあった。捨てた事に対する自責の念……初代の神はもがき苦しんでいたのだ)
もがき苦しんでいた……?
……ネーレウスは吉田のおじいちゃん側の考えしかしないんだね。
捨てられた『子』の気持ちは?
ただ容姿が周りと違うだけで捨てられた『子』の気持ちは?
……吉田のおじいちゃんが『子』を『完全な悪』だと知る為だけに創られた世界で……『あの子』がどれだけ傷ついてきたかなんて……誰も知ろうとしないんだね。
……?
あれ?
あ……
ごめん。
わたし、今変な事を考えた……?
……吉田のおじいちゃんの息子さんの感情……だよね?
なんでかな?
自分の事じゃないみたいな感じがした?
(ぺるみ……初代の神の息子だと分かった今ならば感じる事ができる。ぺるみの魂はペルセポネでありルミでありルゥでもある。だがその根本は『あの子』だ。『あの子』の魂は……そう簡単に蓋ができるものではない。全てを知った今、『あの子』の心が……出てこようとしているのかもしれないな。だが……あの頃はベリアルの心が抑えていたが……今は……)
悪い心を抑える優しい心が無いって事かな?
(いや、ペルセポネ、ルミ、ルゥ……たくさんの苦労を乗り越えてきたぺるみの心なら……『あの子』の疲れ、傷つき、苦しむ心を優しく癒してくれるはずだ)
……乗っ取られる事は無いのかな?
(……ぺるみ、そうなれば……もしそうなれば……我ら上位精霊は……ぺるみを……消さねばならない。それが、この世界の理だ)
この世界の理……か。
変えようとしてもまるで補正されるかのように元に戻ってしまう力。
わたしが今朝、全てを知ったのもその補正力だとしたら……
この世界が……
わたしを悪だと知りたいと、吉田のおじいちゃんが創ったこの世界が……
わたしを悪だと知りたがっているって事?
だとしたら……
わたしは吉田のおじいちゃんの息子さんに完全に支配されちゃうんじゃないかな?